英語でバレエレッスン 第9回 [Oh,my Gooodness!]

親子で英語圏に住み、現地の学校に行きながら英語を学ぶ……。3歳の娘と母親である筆者は、夫のアメリカ転勤のために、そんな理想的な環境に飛び込むことになりました。果たして本当に「子どもは英語にすぐ慣れるから大丈夫」? アメリカに住みながら英語を学ぶメリットとデメリットとは? 筆者のアメリカ生活をとおして、日本に住むご家庭では、どんな取り組みができるのか考えていきます。
※「Oh,my Gooodness!」とは、「あらまあ!」という驚きを表すことば。

蛍光灯のあかりが、壁一面の鏡に映り込んで、こうこうと輝いている。バレエスタジオの中では、黒いレオタード姿の小学生やティーンエージャーの女の子たちが壁際に一列に並び、バーレッスンをしていた。そのなかに混じっている大人が二人。一人は浅黒い肌に長く束ねた黒髪、すらりとしたフィリピン人女性。そしてもう一人は私である。アメリカ人のなかに混じると、日本人の私だけが、足が短く頭が大きい。恥ずかしさと戦いながら、私はまわりの動きを必死に目で追っていた。

バレエ教室に入ったのは、渡米してから3カ月ほどたったころ。日本で大人になってから習い始めたバレエを続けるため、そして少しでもアメリカ人のなかに溶け込むために、思い切って教室を探したのだ。「第4回 英語の電話」での保育園探しのときと同じく、電話をかけまくる作戦でうまくいった。

一番の不安は、英語でのレッスンについていけるのかどうかだ。先生は、50代とおぼしきベテラン風の女性、ミス・アンジー。彼女の英語は比較的聞き取りやすいのだが、レッスンではネイティブの日常会話のペースで話すので、ほとんど理解できない。しかし、言葉での説明をしながら手本を踊ってくれるので、それを見れば何をすればいいのかだいたいわかる。「プリエ」や「タンデュ」といったバレエ用語が日本と共通だったのも大きな助けになった。

CDから流れるピアノの音に合わせて、足を曲げたり伸ばしたり、前に上げたり後ろに上げたり。久しぶりに自分の居場所に帰ってきたような気分になり、安堵のため息が出る。バレエ用語のほかに、よく使われるフレーズは、「right foot(右足)」、「left foot(左足)」、「turn in(中に)」、「turn out(外に)」、「tummy in(おなかをひっこめて)」、「other side(反対)」、「rise up(つま先立ち)」などなど。「right」と「left」が反射的にわかるまで少々時間がかかったが、4、5回ほどのレッスンで、頭の中に回路ができた。

先生から直接「Your back is ……(あなたの背中は……)」などと注意を受けると、たいてい聞き取れずキョトンとしてしまうのだが、そこで先生はぐっと私の体を押して向きを直してくださる。「あっ、そういう意味だったのか」とわかって「I understand, thank you」と返事をしておく。レッスンに通い続けるうちに、さまざまなフレーズや単語を自然と覚えることができ、「こんな英語の勉強法があったのか」と驚いた。

日本にいると、何かを習うための手段として英語を使う機会は、アメリカほど多くないかもしれない。でも、英語のインターネット通販に挑戦するとか、子どもが好きな絵本のシリーズを洋書で読んでみるとか、何か「好きなこと」へアクセスする手段として英語を使うように意識してみてはどうだろう。きっと、楽しみながら語彙を増やせるはずだ。

プロフィール

山本美芽

音楽・ノンフィクションライター。中学校教諭、養護学校教諭からライターに転身。現在は音楽と教育をテーマに執筆活動を行う。著書に「りんごは赤じゃない 正しいプライドの育て方」「子どものセンスは夕焼けが作る」など。2006年3月より米カリフォルニア州在住。1児の母。

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