入園準備 第5回 [Oh,my Gooodness!]

親子で英語圏に住み、現地の学校に行きながら英語を学ぶ……。3歳の娘と母親である筆者は、夫のアメリカ転勤のために、そんな理想的な環境に飛び込むことになりました。果たして本当に「子どもは英語にすぐ慣れるから大丈夫」? アメリカに住みながら英語を学ぶメリットとデメリットとは? 筆者のアメリカ生活をとおして、日本に住むご家庭では、どんな取り組みができるのか考えていきます。
※「Oh,my Gooodness!」とは、「あらまあ!」という驚きを表すことば。

あやしい英語で電話をかけまくった結果、私はようやく、あるデイケア(保育園)の見学にこぎつけた。

交差点の角のショッピングモールに入り、一番奥にあるデイケア(保育園)の前で車を止める。ガラスのドアを開け、インターホンを押すと次のドアが開いて、デイケアの中に入る。最初に「ハロー!」と声をかけて迎えてくれるのは、ふっくらとした受け付けの女性だ。3歳児クラスの教室に入ると、担任のミス・ジェニーが目に入った。黒い髪に浅黒い肌、知的であたたかい雰囲気を漂わせたインドネシア人だ。

初めて見学に行ったとき、ミス・ジェニーはとても親切に私たちを迎えてくれた。なんといっても、英語を話せない娘がクラスでやっていけるのかどうかが心配だ。ところが先生たちは、英語を話せない子の受け入れに慣れていた。「私たちが日本語を覚えるから、単語の一覧表を作ってちょうだい。それで最低限のやりとりができれば、子どもはだんだん英語を覚えていくから大丈夫よ」と言う。クラスメイトのベトナム人、イスラエル人、インド人、メキシコ人、みんなこの方法でうまくいったのだとか。

そう言われて子どもたちを見てみると、白人、黒人、ヒスパニック、アジア系と、髪の色や肌の色が見事にバラバラ。ひとつの教室に、世界中から来た子どもたちが集まっている様子は壮観だった。子どもは20人ちょっとで、先生は2人。ミス・ジェニーの子どもたちへの対応を見ていると、威厳があって優しく、話す英語も聞き取りやすい。泣いている子がいれば抱き上げて、「どうしたの」と話しかけている。もうひとりの先生も、とても感じがいい。先生方を信頼して、ここに通ってみようと私は決めた。デイケアならば夕方まで預かってもらうことも可能だが、娘が日本語を忘れないよう、午前中のみ通わせることにした。

入園までに、膨大な書類を作った。訴訟社会のアメリカとあって、15枚以上は作っただろうか。これが辞書を引きながらの実に勉強になる作業だった。予防注射関連では、おたふく、水ぼうそう、はしか、ポリオといった病気の名前が出てくるし、子どもの性格や特徴を記述する欄もある。娘が寝静まった夜中に、私と夫は「食が細いのは、なんて書けばいいの? She is a light eater?」などと話しながら辞書を引き、英作文をした。

そして娘が話す日本語を英語に直した一覧表を作った。「トイレ」は、「ごはん」が、「先生」は、「おとうさん」は、「おかあさん」は、「おうち」は、「お友達」は、「やだ」は、「うん」が、「いす」が、「すわりなさい」が、「これちょうだい」が、「だっこ」が、「くつ」は、「おようふく」が……。娘と先生が困らないように、思いつく限りの単語を表にしていく。

ちょっと字は小さくなったが、表はA4の紙1枚に全部おさまった。これは先生たちのために作ったものだが、ここに出てくる英語を娘が覚えられたら、デイケアで困らないだろう。それに気が付いてから、少しずつ私は表にした内容を娘に教え始めた。

こうして必要に迫られて英語をインプットせざるをえない点は、アメリカで英語を学ぶメリットである。でも日本で生活しながらでも、親子で似たようなことはできる。まずは机やテーブル、台所に冷蔵庫に電子レンジ、トイレやお風呂といった家の中にあるものを全部英語で言えるようにしてみてはどうだろう。まずは、普段しゃべっていることを英語に直してみるのが第一歩だと思う。

プロフィール

山本美芽

音楽・ノンフィクションライター。中学校教諭、養護学校教諭からライターに転身。現在は音楽と教育をテーマに執筆活動を行う。著書に「りんごは赤じゃない 正しいプライドの育て方」「子どものセンスは夕焼けが作る」など。2006年3月より米カリフォルニア州在住。1児の母。

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