英語の電話 第4回 [Oh,my Gooodness!]

親子で英語圏に住み、現地の学校に行きながら英語を学ぶ……。3歳の娘と母親である筆者は、夫のアメリカ転勤のために、そんな理想的な環境に飛び込むことになりました。果たして本当に「子どもは英語にすぐ慣れるから大丈夫」? アメリカに住みながら英語を学ぶメリットとデメリットとは? 筆者のアメリカ生活をとおして、日本に住むご家庭では、どんな取り組みができるのか考えていきます。
※「Oh,my Gooodness!」とは、「あらまあ!」という驚きを表すことば。

アメリカに来てからしばらくの間、私と娘は公園に行ったり時々日本人のお友達と遊んだりといった毎日を送っていた。しかし、どうしても物足りない。娘が8カ月のときから保育園に通っていたので、親子ともに集団生活が懐かしいのである。どこか通えるところはないだろうかと、電話帳のデイケア(保育園)やプリスクール(幼稚園)のページを開いてみたら、あるある、たくさんあるではないか! 地図を見ながら場所を調べ、通えそうなところを何カ所かリストアップした。あとは電話するだけだ。

しかし、これまで英語で電話をしたことなんて一度もない。正直いって心配だったが、ここで躊躇していては何も始まらないのだ。「日本で英会話の個人レッスンをしたら1時間3,000円でしょ。ネイティブと5分話すとしたらレッスン料は250円。それが無料なんだから」と自分に言い聞かせた。

勇気を出して、いざ電話。「あっ、つながった」と思った瞬間から、相手のアメリカ人は猛スピードでまくしたててくる。その聞き取りにくさといったら……。ほとんど何を言っているのかわからず、呆然とした。テレビだって聞き取れないけれど、電話は映像も字幕もないので、テレビよりもさらに訳がわからない。結局、最初の4回から5回は、なにがなんだかよくわからないまま、気がついたら「サンキュー、バアーイ」と言って電話を切っていた。

落ち込みながらも、翌日からまた電話をかけ続けた。すると、少しずつ話が通じるようになってきたのだ。まず、相手は猛スピードでしゃべってくるから、「Please speak slowly.」と伝える。しかし、ゆっくりしゃべってもらっても、結局あまり聞き取れない。そこで、「My daughter is 3 years old.Do you have space available for her?」(うちの娘は3歳なんだけど、空きはあるかしら)と、こちらの質問をしつこく繰り返すのだ。運が良いと、相手が「Yes」とか「No」と言ってくれるから、用件はわかる。時々「忙しいからあとでかけて」と言われることもあれば、忍耐強く対応してもらえることもあった。

電話をかけたあと、私はどっと疲れてしまい、ごろんとソファに横にならずにはいられなかった。「お母さん、どうしたの?」と心配そうに娘が寄ってくる。「ああ、だいじょうぶよ」と情けない姿で答えながらも、少しずつ「なんとかなるかも」という手ごたえを感じていた。あまり込み入った話でなければ単語の羅列でも意味は通じるし、聞き取れなければ質問を繰り返せばいいのだ。毎日のように電話をかけ続けていると、だんだん緊張がとれ、単語の羅列ぐらいはなんとか話せるようになり、最後には気に入ったデイケアを見つけることができた。

わずか10分程度、決まり文句を繰り返すだけでも、毎日続けるとどんどん慣れて、少しずつスムーズになって、だんだん無意識に言えるようになる。この「毎日決まり文句を繰り返し話す」というのが、アメリカで英語を学ぶ最大のメリットなのだと思う。でも、日本に住んでいても、たとえば親子で「May I ask a question?」「Sure!」のような、簡単な決まり文句を毎日やりとりしていれば、同じようにフレーズが蓄積できるはずだ。もっとも、子どもが相手になってくれるかどうかが大問題ではあるのだけれど。

プロフィール

山本美芽

音楽・ノンフィクションライター。中学校教諭、養護学校教諭からライターに転身。現在は音楽と教育をテーマに執筆活動を行う。著書に「りんごは赤じゃない 正しいプライドの育て方」「子どものセンスは夕焼けが作る」など。2006年3月より米カリフォルニア州在住。1児の母。

おすすめトピックス

子育て・教育Q&A