公園デビュー 第3回 [Oh,my Gooodness!]

親子で英語圏に住み、現地の学校に行きながら英語を学ぶ……。3歳の娘と母親である筆者は、夫のアメリカ転勤のために、そんな理想的な環境に飛び込むことになりました。果たして本当に「子どもは英語にすぐ慣れるから大丈夫」? アメリカに住みながら英語を学ぶメリットとデメリットとは? 筆者のアメリカ生活をとおして、日本に住むご家庭では、どんな取り組みができるのか考えていきます。
※「Oh,my Gooodness!」とは、「あらまあ!」という驚きを表すことば。

どこまでも続く真っ青な広い空。私は娘の手をひきながら、街路樹の木陰になった歩道を、ずんずんと歩き公園へと向かっていた。高い建物も電線もないから空が広い。車道と歩道の間には芝生の緑地帯がたっぷりとってあるから、娘が駆け出しても安心だ。午前中の住宅街は、車なんてときどき通る程度で、しーんと静まり返っている。犬を連れて散歩しているジョギング姿の人たちが、すれ違いざまに「Hi」と言って微笑んでくれる。これがカリフォルニアなんだ、と私はぼんやり考えた。

アメリカに来てから、雨の日以外は、娘と一緒に毎日のように公園に出かけていた。「これ、やりたい!」という娘と一緒にすべり台を昇り降りしていると、他の親子の会話が耳に入ってくる。すべり台をうまく降りてきた幼児に対しては、「Good job!」。あぶないときは「Be Careful」、家に帰るときには「Time to go home」といった具合。その他の会話はほとんど聞き取れないのだが、こうしたごく短い決まり文句は少しずつわかるようになった。

公園での親の行動パターンは、子どもを監視するか、親同士でおしゃべりしているか、携帯電話で誰かとしゃべっているか、いずれかだ。グループになっておしゃべりに花が咲いている人たちには近づけなかったし、何を話しているのか「聞き耳」をたてても、それこそ会話が速過ぎて全くわからなかった。でも、子どもを見ながら遊ばせているママさんのうち、半分ぐらいは私たちに「Hi」「How old is she?」「She is so cute」などと、私と娘に話しかけてくれた。「Take turns(順番ね)」と言って、すべり台を降りる順番をうちの娘にゆずるように自分の子どもに促してくれる人もいた。しかし娘は、「Hi」とか「Bye」とか言われても、さっと体を固くして私の後ろに隠れてしまうのだった。

ある日に公園に行くと、よちよち歩きの金髪の男の子、ボビー君がいて、娘は一緒に遊びはじめた。ボビー君のパパは、熊さんのように体格がよく、まだ肌寒いのにTシャツに短パン姿。「日本ではどのへんに住んでいたの?」など、私にいろいろ話しかけてくれる。娘とボビー君はキャッキャッと歓声をあげ、競ってすべり台に昇っては降りる。ふたりの様子を見て「It"s baby competition!」とボビー君のパパが豪快に笑う。

帰り道に娘はボビー君に向かって手を振り、「バアーイ」と叫んだ。ついに、娘がアメリカ人に向かって話したのだ! ありがとう、ボビー君とパパ。そう心の中でつぶやきながら、私も一緒になって何度も「バアーイ」と手を振った。

勉強としてではなく、気持ちを伝えるために英語を話してみると、英語が自分のなかにしっかりと根付いていく気がする。これこそがアメリカで英語を学ぶメリットだろう。でも、日本にいてもネイティブスピーカーと英会話のレッスンをすれば、似たような体験はできるはずだ。要するに、英語しかわからない人に、何かを伝えられればいいのだから。

プロフィール

山本美芽

音楽・ノンフィクションライター。中学校教諭、養護学校教諭からライターに転身。現在は音楽と教育をテーマに執筆活動を行う。著書に「りんごは赤じゃない 正しいプライドの育て方」「子どものセンスは夕焼けが作る」など。2006年3月より米カリフォルニア州在住。1児の母。

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