日本との別れ 第1回 [Oh,my Gooodness!]

親子で英語圏に住み、現地の学校に行きながら英語を学ぶ……。3歳の娘と母親である筆者は、夫のアメリカ転勤のために、そんな理想的な環境に飛び込むことになりました。果たして本当に「子どもは英語にすぐ慣れるから大丈夫」? アメリカに住みながら英語を学ぶメリットとデメリットとは? 筆者のアメリカ生活をとおして、日本に住むご家庭では、どんな取り組みができるのか考えていきます。
※「Oh,my Gooodness!」とは、「あらまあ!」という驚きを表すことば。

その日、私と3歳の娘は、サンフランシスコへのフライトを控え、成田空港にいた。

「ほら、飛行機が飛んでいくよ!!」「ほんとだ!!」

目を輝かせてガラス窓にへばりつき、滑走路を眺める娘。

「これでしばらく日本ともお別れだからね。よく見ておくのよ」
「どうして?」
「お父さんがアメリカで待ってるからよ。早くお父さんに会いたいね」

娘の手をぎゅっと握りながら、私の頭の中は引越しのごたごたやお別れしてきた保育園の友達や先生のこと、そしてアメリカに着いてからのこと、まさに悲喜こもごもが渦巻く状態だった。とにかく無事にたどり着いて、生活をはじめなければ。英語の勉強は、そのあとだ。

夫がカリフォルニアに転勤となり、私と娘も一緒にアメリカに行くことになった。任期はいちおう5年ぐらいの予定だ。娘が通っていた保育園のママ友達には「まあ、英語がペラペラになるわね。うらやましい」と言われた。

英語育児や親子留学が大ブームの昨今、家族そろってアメリカで過ごし、英語に浸れるのはとてもラッキーなことだと、私も思う。娘の教育について考えれば、アメリカ生活では得るものはあっても、失うものはあまりないだろうと気楽に考えていた。

ところが、渡米前に海外赴任セミナーに出席して、帰国子女をサポートする専門家の話を聞いたところ、「いずれ日本に戻るのなら、日本語を忘れないようにするのが第一です」と強調していた。現地校に入って、英語で考えている時間が長くなると、子どもがあっという間に日本語を忘れて、兄弟げんかを英語で始めるようになるという。

講師のかたは、こんなふうに言っていた。

「カルタや絵本をたくさん持っていってください」
「絵本は、寝る前だけでなく、一日に何度も読み聞かせてあげてください」
「日常会話でも、主語や述語をきちんといれた長い文章で話しかけてあげましょう」
「日本語のテレビも、なるべく見せてあげてください」

私たちの住む街には日本人向けの学校はないから、娘は現地の保育園や公立小学校に行くしかない。アメリカに住むことになったとたん、それまで当たり前のように過ごしていた日本という場所が、突然「子どもに日本語を自動的にインプットできる環境」として、貴重に思えてきた。

これからは日本語の本の図書館はないし、見られるテレビも限られているし、同年代の日本人の子どもは2、3人いるかどうか……。渡米前の引越し作業をしながら、私は娘のためにカルタを何種類か、絵本を数十冊、それからアニメのDVDなどを買い込んだ。今後は、こういうものが貴重品になる。

日本で英語教育をしている限り、日本語がおろそかになる心配はない。当たり前のようだが、これは大変なメリットなのだ。

プロフィール

山本美芽

音楽・ノンフィクションライター。中学校教諭、養護学校教諭からライターに転身。現在は音楽と教育をテーマに執筆活動を行う。著書に「りんごは赤じゃない 正しいプライドの育て方」「子どものセンスは夕焼けが作る」など。2006年3月より米カリフォルニア州在住。1児の母。

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