中教審「答申」 どうなる!義務教育のゆくえ・小学英語は充実へ

— 文部科学省 初等中等教育局 銭谷局長インタビュー(前編) —

10月26日、中央教育審議会は、答申(「新しい時代の義務教育を創造する」)をまとめました。今回のこの答申が議論されたのは、「義務教育特別部会」でした。ここは、義務教育のありかたについて専門的な調査審議を行なうために特別に置かれた部会です。

今回、「義務教育特別部会」の審議を通して、行政としての責任を負う文部科学省の義務教育改革へのビジョンを具体的に聞いてみたいと思います。

義務教育はこれからどうなるのでしょう?今回の中教審の答申にいたる流れと、その意味を文部科学省・初等中等教育局の銭谷眞美局長にうかがってみました。

■今回の中央教育審議会のなかに設けられた「義務教育特別部会」における審議の観点を整理していただけますか。どのようなテーマを抱えて、審議がスタートしたのでしょうか?

もともと、中央教育審議会(以下:中教審)は一昨年、昨年から、3つの諮問(※文部科学大臣が中教審に対しある問題について意見を求めること)を受けて、議論してきました。

1つ目は、2003年から包括的な諮問をうけていた「今後の初等中等教育の推進方策について」(学校制度や教育内容の在り方)。2つ目は「地方分権時代における教育委員会制度の在り方について」(地方の教育委員会の在り方)。3つ目は、義務教育の担い手である先生方に関連して、「今後の教員養成・免許制度の在り方について」です。これらを中教審ではすでに議論していたのです。
その後、2004年11月26日に「三位一体」に関する「政府・与党合意」というものが出されました。この合意では、「義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、また、教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する」こととされ、「こうした問題については、平成17年秋までに中央教育審議会において結論を得る」とされました。これを受けて、2004年までの3つの諮問事項に費用負担の在り方を加え、義務教育そのものの在り方全般に関して、この2月から新たに「義務教育特別部会」を設けて議論することになったのです。

「義務教育特別部会」における審議の観点は、大きく5点に整理できます。
それは、

「義務教育の制度・教育内容の在り方」
「(義務教育に関わる)国と地方の関係・役割の在り方」
「学校・教育委員会の在り方」
「義務教育に係る費用負担の在り方」
「学校と家庭・地域の関係・役割の在り方」

の5点です。部会では、こうしたテーマについて、実に8ヶ月、41回、100時間を超える審議を行ってきました。

■8ヶ月の長丁場、どのような手順で議論が進んでいきましたか?

まず、2月から5月にかけて、子どもの現状、学力問題、教育内容、教師像、学校像、学校と地域の関係など、費用負担を除く義務教育の在り方について議論しました。続いて、6月から7月にかけて、義務教育費の国庫負担など、費用負担の問題について集中的に時間をかけて議論しました。その後、それまでの審議経過報告を公表した上で、広く国民の皆様や関係団体などからのご意見をいただきました。これらの意見を踏まえて、8月末から議論を再開し、義務教育の在り方および費用負担について総合的に議論してきました。

■審議を終え、現時点における教育の課題認識は何でしょうか。また積み残しとなった懸案は何でしょうか。

義務教育特別部会は、義務教育改革に関する大きな方向性を出すことを主眼として審議を重ねてきました。公立の小中学校の在り方やそれを支える教育行財政の在り方に関する基本的な方向性は10月26日の答申で出していただいたと考えています。


中央教育審議会の答申「新しい時代の義務教育を創造する」が
鳥居会長から中山前文部科学大臣に提出された(10月26日)
(文部科学省ホームページより転載許諾済み)



この大きな方向性を受けた具体的な改革方策のうち、例えば小学校英語や、総合的な学習をどうするのかなどの教育課程の内容や、先生の免許制度をどうするのかなどの教員養成のシステムなどについては、それぞれ同じ中教審の中の、「教育課程部会」「教員養成部会」で今後さらに審議を深めることとしています。これらの教育課程や教員養成の在り方の問題は、両部会でできれば年内には方向性を出していただければ、と考えています。

■今回の『義務教育特別部会』の審議を終えて、その審議内容のポイントは何でしょうか?

今回の中教審『義務教育特別部会』の議論には、3つの大きなポイントがあります。

1つ目は、「義務教育とは何なのか、義務教育の根幹は何か、それに対する国・都道府県・市町村はどのような責任を持つのか」など、義務教育に関する理念が明確になったことです。義務教育の目的は、一人一人の国民の人格形成と国家・社会の形成者の育成ということが確認されました。憲法で保障されている義務教育の根幹とは「機会均等」「水準確保」「無償制」であり、この根幹を守るために、国・都道府県・市町村がそれぞれの役割を果たしながら義務教育の充実をはかる必要があります。義務教育の充実は世界中どこでも国政の最重要政策と位置づけられており、我が国でも国家戦略として取り組む必要があります。

2つ目には「義務教育の構造改革を打ち出した」ことです。国が基準を作って条件整備を行った上で、実際の学校教育の実施については、公立小中学校の設置者である市町村や学校自体の裁量、つまり自由度を増やして実施していく。そして、結果の検証については国民に示せるよう国全体で進めていく。この大きな構造改革を目指して、権限関係の見直しを提言しています。

3つ目には「義務教育費国庫負担制度の在り方、つまり誰が義務教育の費用を負担するのか」を明確にしたということです。実は、義務教育の費用の75%は教職員給与費で占められているのですが、この教職員給与費について、国と地方が協力して応分に負担し、給与費の全額を保障している現在の制度(義務教育費国庫負担制度)は大変大事な制度であるということが確認されたんです。また、現在、市町村が負担している施設、教材費、図書費についても国の何らかの支援が必要だとされています。

■国が義務教育の予算をもつことで、構造改革が遅れるのではないか、との見方もマスコミにはあります。一般家庭では、今後どのような影響があるのでしょうか。

現在、学力低下への懸念や後を絶たない問題行動など、公立学校に対する厳しい見方、不信感は少なくないと思います。このまま公立学校に通わせていいのか、安心できるのか、などの議論もあります。

こうした公立学校への不信を払拭するためには、公立学校で教える先生方が高いモチベーションを持ち、学校が経営体としてしっかり運営されること、そして設置者である自治体が学校をしっかり支えること、さらにこれらの取組を国・都道府県が支えるということが重要になってくると思います。

公立学校教育が、責任ある体制の下で、生き生きとしっかりと行われるために、教育の構造改革を実現する必要があります。今回の答申は、こうした改革のスタート地点であると考えています。

■保護者の不安、制度的な安心を維持するのか?保護者から見れば、これからの教育に安心できる答申になったのでしょうか?

その意味では、今回の答申で二つの点が重要です。

一つは、義務教育は国全体として非常に大切なものであり、引き続き国、地方とも義務教育に力を注いでいくべきだということが確認されました。もう一つは、日本のどこで生まれ育っても、一定水準の教育を受けられるように整備するということです。全国のどこの学校でも、先生方が、モラル高く、モチベーションを高く持って教育を実施する、そしてその結果として子どもたちの知育、徳育、体育がそれぞれどうなったのかをしっかり検証できる仕組みを作ることが提言されています。

こうした全体の改革によって、公立学校教育の水準を維持・向上していくというメッセージが込められています。

■教育内容の改善に関してお伺いします。「小学校段階」における英語教育はどのような教育を目指すものなのでしょうか。教科として位置付けられるのか、総合的な学習の時間内の「英語活動」の強化を示すものでしょうか。ご検討の課題認識をお聞かせ下さい。

本年2月、中教審の「教育課程部会」に対して、中山前文部科学大臣から4点の審議の要請がありました。
それは大きく

「『人間力』向上のための教育内容の改善充実」
「学習内容の定着を目指す学習指導要領の枠組みの改善」
「学ぶ意欲を高め、理解を深める授業の実現など指導上の留意点」
「地域や学校の特色を生かす教育の推進」

という4点で、これを『教育課程部会』で審議してほしい、との話がありました。

この中の最初の事項「人間力」向上のための教育内容の改善充実」の中に、「社会の形成者としての資質の育成」、「国語力の育成」、「理数教育の改善充実」などとともに、「外国語教育の改善充実」が盛り込まれています。

具体的には「外国語専門部会」という中教審の専門部会のなかで、審議検討中です(11月現在)。現在、英語教育は概ね、総合的な学習の時間の国際理解の活動の一環として実践されている小学校が多いのですが、時間数は月1回程度が平均的です。指導者もまちまちであるという課題も抱えています。

一方、小学校現場では、「研究開発学校」や「構造改革特区」で現在様々な取組も行われています。その成果・効果や、諸外国での取組を検証しながら、外国語専門部会で具体的な検討を加えている最中です。

今後、小学校段階で「必修」にするのか、必修にする場合は教科にするのか、開始はいつからか、内容はどうするのか、教材は何を使うのか、小中の連携はどうするのか、そして誰が小学校教育を担うのか(指導者確保)・・・など、多くのことを検討しなければなりません。英語教育の充実の場合、手立てを明確にしないと、何のための英語教育か、どのような力をつけるための英語教育なのか、が問われかねません。いずれにしても、小学校段階の英語教育の充実の方向で検討されています。
もうすこし、お待ちいただきたいと思います。

■わかりました。ありがとうございます。

次回、引き続き文部科学省 初等中等教育局 銭谷局長インタビュー(後編)をお届けします。

理科、国語教育のゆくえ、そして総合的な学習のありかた、全国学力テスト、さらには学校の評価システムのありかたについて、伺っています。義務教育のこれからの改革の方向性、その基本的な考え方を次回、確かめてください。おたのしみに。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • 頑張っているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みをもつ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
ベネッセ教育情報サイト公式アプリ まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

\親子のワクワク体験応援キャンペーン/

アプリ無料ダウンロード+お子さまの情報登録で『鬼滅の刃』グッズやユニバーサル・スタジオ・ジャパン 1デイ・スタジオ・パスが当たるキャンペーン実施中!

キャンペーン期間:2021年9月30日(木)~11月30日(火)

この記事はいかがでしたか?

おすすめトピックス

子育て・教育Q&A