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あじさいや桜の名所であり、写経も体験できる『長谷寺』の本尊とは?

『長谷寺』の本尊とされる木像は、時間を超えて鎌倉にやってきた?

「鎌倉の西方極楽浄土」――大層な謳い文句がしっくりくるお寺を、皆さんはご存じでしょうか?

鎌倉といえば『高徳院』(こうとくいん)の大仏を想像する方が多いかもしれませんが、そこから徒歩圏内にある『長谷寺』(はせでら)も観光客にとって見逃せない場所です。

736年に創建されたと言われ、鎌倉の数ある寺院の中でも有数の歴史を誇る『長谷寺』は、四季を通じて美しい植物に彩られています。特に見事なのは、40種類以上かつ約2,500株という規模で咲くあじさいです。それだけの花々に囲まれたなら、確かに極楽浄土の気分を味わえそうです。

ところで、『長谷寺』という名前を持つお寺は全国各地に点在しています。もしかしたら皆さんの近所にも、『長谷寺』と書いて「ちょうこくじ」「はせじ」「ちょうこくでら」などと読むお寺があるかもしれません。

中でも注目すべきは奈良県桜井市の『長谷寺』(読みは「はせでら」)で、こちらは鎌倉の『長谷寺』と双子のような関係と言われています。

鎌倉と奈良の『長谷寺』は、それぞれ『十一面観音像』(じゅういちめんかんのんぞう)を本尊としています。伝説によれば、721年に徳道(とくどう)という僧侶が1本のクスノキから2体の木像を彫るよう命じ、そのうち1体を奈良の『長谷寺』に安置しました。

もう1体は海に流されてしまうのですが、「どこか違う場所で人々を救ってくれるように」という願いを託された木像は、15年の歳月を経て神奈川県の三浦半島に漂着します。これを鎌倉の地に移し、新しく開いたお寺が現在の『長谷寺』となりました。

私たちの顔はひとつしかないけれど…『長谷寺』から学ぶ【教え】

ここからは、本尊の『十一面観音像』についてもう少し深く掘り下げていきましょう。

鎌倉の『長谷寺』にまつられている金色の像は、なんと9.18メートルもの高さがあります。 木製の仏像としては日本最大級の大きさです。

「十一面」とは読んで字のごとく、11の顔という意味なので、ぜひその姿を想像してみてください。これが「千手」観音像だと、手の数を1,000本から42本に減らして造るのが一般的ですが、『長谷寺』の「十一面」観音像には本当に11のお顔があります。

11のお顔でぐるっと四方八方を向いて外の世界を見守っています。

まず正面には、穏やかな表情を浮かべる『菩薩相』(ぼさつそう)が3つ。
左側には「邪悪な人への戒め」として怒りをあらわにする『瞋相』(しんそう)が3つ。

右側には人々の善い行いを見て微笑んでいる『狗牙上出相』(くげじょうしゅつそう)が3つ。

残すところ2つのお顔ですが、片方は観音像の後頭部にあります。これは『大笑相』(だいしょうそう)と呼ばれ、この世の悪を笑い飛ばそうとする顔なのです。

そして、最後の1つのお顔は頭頂部にあり、何もかもを悟ったかのように見えるその表情を、人々は『仏相』(ぶっそう)と称し究極の理想だと考えていました。

私たちは当然、『十一面観音像』のように複数の顔なんて持っていませんし、そう簡単に悟りを開くこともかないません。しかし人生であらゆる経験を積んでいく中、ひとつしかない自分の顔をいろいろな表情に変化させることならばできるはずです。それこそ、「十一面」よりも多種多様な表情で――。

『長谷寺』へ写経を体験しに行ってみましょう

『長谷寺』は、『回遊式庭園』という特徴を持ち、自然に囲まれながらの境内散策を楽しめます。鎌倉の街並みを一望可能な見晴台も人気ですし、書院では道具を借りて写経・写仏体験をすることもできます。また、2015年には『長谷寺宝物館』が『観音ミュージアム』としてリニューアルオープンし、さまざまな展示物を通して観音菩薩の教えにふれられるようになりました。

アクセスマップ

名 称:長谷寺
時 間:3月~9月 8時00分~17時00分(閉山17時30分)、10月~2月 8時00分~16時30分(閉山17時00分)、観音ミュージアム 9時00分~16時00分(閉館16時30分)
休 日:無休(観音ミュージアムの休館日は展覧会によって異なる)
料 金:大人300円、小学生100円(観音ミュージアムは、別途大人300円、小学生150円)
住 所:神奈川県鎌倉市長谷3-11-2
電 話:0467-22-6300
※情報は変更されている場合があります。

監修者プロフィール
河合 敦(かわいあつし)
多摩大学客員教授。歴史研究家。1965年東京都生まれ。多数の歴史書を執筆するとともにテレビやラジオなどのメディア出演多数。
代表的な著書に『日本史は逆さから学べ!』(光文社知恵の森文庫)、『もうすぐ変わる日本史教科書』(KAWADA夢文庫)などがある。