女子の可能性広げる理系進路

理系で学んだり仕事をしたりしている女性や、理系進学を目標にする女子中高生を指す「リケジョ(理系女子)」という言葉が、10年ほど前からよく聞かれるようになりました。
しかし進路選択をする中高生にとっては、理系進学後の大学生活や就職後のライフコースが見えづらく、戸惑いを感じる場合も少なくないようです。国の政策や働き方改革が広がる中で、今どきの理系人材の多様性に触れることが、進路選択の際に役立ちそうです。

起業・転職など多様化

経済協力開発機構(OECD)は毎年、世界各国の教育に関するデータをまとめています。2017年の報告書によると、大学等入学者の半数が女子であるにもかかわらず、日本で自然科学、技術、工学、数学を専攻する女子学生の割合は、OECD加盟国の中で最も低いとレポートされています。
政府は2006年に、女性研究者を理学系で20%に、工学系で15%にまで増やす数値目標を掲げました。2010年には理系分野を目指す女子中高生に対する支援や、女性研究者のための環境整備を重点施策としています。大学や中学・高校における女子の理系進学が強調され始めたのも、このころからです。

6月末、理工系分野に関心のある女子を応援するため、内閣府等が主催するイベントが東京・お台場で開かれ、理系進学・卒業後に科学技術分野で働く女性5人の座談会が行われました。印象に残ったのは、理系分野で活躍中の女性たちの悩みは、もはや「家庭との両立」ではないということです。
働き方にまつわる制度や環境の整備が進んだことにより、実現したい目標やビジョン、社会にどう貢献したいのか、そのためにはどのようなキャリアや学び、支援が必要か、といった点に意識が向けられていました。起業あり、転職あり、副業あり、といった多様なリケジョの生き方に、会場の親子は熱心に耳を傾けていました。

幅広い進路選択のための情報収集として

イベントには、理系・文系に限らず「幅広い視野で進路選択をしたい」という動機で参加した親子も多かったようです。ある高校1年生のお母さんは「科目の得意・不得意だけで進路を決めてほしくないから、情報収集のために」と話してくれました。また、中高一貫校に通う生徒の中には、文理選択の時期が早まっているため、科目の成績ではなく「好きなことを仕事にする方法を知りたくて」という気持ちで参加した人もいました。
IT技術の発達で、いわゆる文系と思われる仕事の中にも、理数的な思考が求められる場合があります。それ以前に、今ある仕事のほとんどは、数字やデータ、テクノロジーを扱いながら進めるものになっています。その意味では文系進路を希望する中高生であっても、理系の進路にはどのようなものがあるかを知っておいて損はないのではないでしょうか。逆に理系希望であっても、文理融合型の学部など新しいタイプの専攻を知っておくことも、希望する進路の実現に役立つと思われます。

進路フェアなどで経験談を話す「先輩」の中には、2008年のリーマンショックや11年の東日本大震災に影響を受けながら働いてきた人たちが、出てくるようになりました。大きな社会の変化を経験した人の考えに触れることも、進路決定の貴重な情報源となるのではないでしょうか。

(筆者:長尾康子)

※内閣府男女共同参画局 理工チャレンジ~女子高校生・女子学生の理工系分野への選択~
http://www.gender.go.jp/c-challenge/index.html

※ダイバーシティ推進イベント「理系で広がる私の未来2018」(終了)
http://www.jst.go.jp/diversity/activity/seminar/rikejyojinsei2018.html

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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