徐々に見えてきた共通テストの姿

独立行政法人大学入試センターは6月、2021年1月から大学入試センター試験に代えて実施する「大学入学共通テスト」について、現段階で固まっている内容を関係者に通知しました。最終的には来年度初めに文部科学省が策定する「実施大綱」を待たなければなりませんが、試行調査(プレテスト)に取り組む中で、徐々に姿が見えてきたようです。

国語の記述式は5段階で

センター試験に代わる新テストは、中央教育審議会の答申(2014年12月)、高大接続システム改革会議の最終報告(16年3月)、文科省の実施方針策定(17年7月)を経て、ようやく骨格が決まりました。しかし、思考力・判断力・表現力を中心に問い、しかも大学の入学者選抜にも使えるようにするには、作問はもとより難易度の調整など、テストとして技術的にさまざまな課題が山積していることが、当初から予想されていました。

そのため昨年11月、今年11月と2回の試行調査を行ったうえで、文字通り試行錯誤しながら内容を決め、2019年度中の確認試行調査を経て、20年度の本番に臨むことにしました。今回の通知は、5万人規模で実施した昨年の試行調査結果をもとに改善を図ったもので、10万人規模で行う今年の調査でうまくいけば、その通りに実施されることになります。

まず注目されるのが、国語の記述式問題(20~30字程度、40~50字程度、80~120字程度の3問)が5段階で成績表示される見通しになったことです。国立大学協会は、これを点数化してマークシート式の問題に加点すること(配点はたとえば全体の2割程度)を申し合わせています。一方、数学の記述式問題は、マーク式問題と混在させるため、国語のような段階別表示はせず、通常の配点を行います。
また各教科についても、素点とは別に、9段階程度の段階別評価を参考情報として提供することを検討しています。

具体的な学習場面を想定した出題

通知では、教科ごとに問題作成方針を示しているのですが、その全体を貫く方向性として、「学習の過程を意識した問題の場面設定を重視する」としています。
具体的には、(1)授業において生徒が学習する場面(2)社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面(3)資料やデータ等をもとに考察する場面……などです。
こうした場面設定は、小・中学校の全国学力・学習状況調査の問題にも見られるものです。新学習指導要領を先取りした「主体的・対話的で深い学び」による授業で身に付けた学力をストレートに評価したい……という「メッセージ性」(通知文)が込められています。

英語に関しては、発音・アクセント・語句整序などの問題は出題しないことにしました。これらは「読む」中心のマークシート式筆記試験で「話す・書く」の2技能を間接的に測ろうという苦肉の策で出されてきたものでしたが、外部の資格・検定試験を活用することで直接的に測れるため、不要になったというわけです。
過年度卒業者(浪人生)用の問題は作成しないと明言したことも、大きいでしょう。学習指導要領が変わったわけではないので当然と言えば当然ですが、これまでのセンター試験とは発想の転換が必要です。普段から授業での「主体的・対話的で深い学び」を通して、主体的に考えるくせをつけることが求められます。

(筆者:渡辺敦司)

※大学入試センター「『大学入学共通テスト』における問題作成の方向性等と本年11月に実施する試行調査(プレテスト)の趣旨について」
http://www.dnc.ac.jp/news/20180618-01.html

※国立大学協会「大学入学共通テストの枠組みにおける英語認定試験及び記述式問題(国語)の活用に当たっての参考例等について」
http://www.janu.jp/news/teigen/20180612-wnew-exam-framework.html


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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