情報活用能力は現代の「読み・書き・そろばん」

新学習指導要領で2020年度から小学校に導入されるプログラミング教育が、注目を集めています。そうしたなか、政府が6月に閣議決定した「統合イノベーション戦略」では、AI(人工知能)技術を使いこなすITリテラシー(情報技術の活用能力)を、これからの「読み・書き・そろばん」だと位置付けて、2032年までに初等中等教育を終えたすべての生徒がITリテラシーを獲得する目標を掲げています。

大学生にも標準カリキュラム

近年、AIに代表されるITの進展はめざましく、「超スマート社会=ソサエティー5.0」が到来すると言われています。現在でも企業などでAIの活用が課題になっていますが、とりわけ子どもたちにとって、大人になって就職するころには仕事の約半数が入れ替わると予想されるほど、大きな影響を与えることは必至です。
しかし同戦略では、日本の労働生産性が先進7か国(G7)の中でも最下位で、国際競争力の劣化も懸念されることから、科学技術も含めたイノベーション(革新)が喫緊の課題だとしています。

そのためには、ITに関して「桁違いな規模による人材の育成・活用」が必要だとして、AIやビッグデータ、IoT(モノのインターネット)などを担う「先端IT人材」を(1)トップ・棟梁(とうりょう)レベル(2)独り立ちレベル(3)見習いレベル……に分けるとともに、(4)一般IT人材⑤国民一般……を加えて裾野を広げつつ、2025年までに先端IT人材を年数万人規模で、IT人材を数十万人規模で輩出するという戦略を描いています。
このうち(4)に関しては、大学の全学生に、数理やデータサイエンスを学ばせる標準カリキュラムを普及させるとしています。そして(5)を担うのが、新指導要領です。

新指導要領でも「基盤」

新指導要領は、「何を学ぶか」だけでなく、「何ができるようになるか」を重視し、そのために「主体的・対話的で深い学び」など「どのように学ぶか」を改善することを求めています。「何ができるようになるか」の具体的な姿として、すべての教科等を横断して共通に育てる「資質・能力の三つの柱」(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等)も設定しました。
その上で新指導要領は、情報活用能力を、言語能力と並ぶ「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けました。情報活用能力は、ICT(情報通信技術)リテラシーとも呼ばれ、統合イノベーション戦略で言うITリテラシーと、ほとんど同じと言ってよいものです。「学習の基盤」が「読み・書き・そろばん」に当たるわけです。

新指導要領でプログラミング教育が強化されたのも、小学生のうちから「プログラミング的思考」を育むためです。同戦略では、授業を支援するICT支援員を2022年度までに4校に1名配置するとともに、プログラミング等を学びたい児童・生徒などが発展的に学び合う「地域ICTクラブ」を試行するとしています。
高校で新指導要領が全面実施となる生徒(現在の小学6年生)が大学を受験する際には、大学入学共通テストで情報科目も出題される予定です。
子どもたちが激変する社会で活躍できるようにするためにも、社会の総力を挙げて情報活用能力の育成に取り組みたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※統合イノベーション戦略
http://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/index.html

※小学校プログラミング教育の手引(第一版)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/03/30/1403162_01.pdf

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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