新たな社会に必要なチカラ、意外にも…?

人工知能(AI)の進化で、今ある仕事の半分がなくなる……こんな話題が今、ビジネス界でも持ちきりです。政府も現在、情報社会がバージョンアップした「超スマート社会」(ソサエティー5.0)に向けた対応を探っています。文部科学省は、そんな時代の学びがどうあるべきかについて、報告書をまとめました。

意味付けのできる人間だからこそ

ソサエティー5.0とは、人間の社会に関して、狩猟社会をバージョン1.0とすれば、農耕社会が2.0、工業社会が3.0、情報社会が4.0、そして次に来る超スマート社会が5.0に当たる……という考え方に基づく呼び方です。
ここで言うスマートとは、スマートフォン(スマホ)と同様、「賢い=高性能」という意味です。AI、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)、ロボティクスなどの高度化した先端技術が、あらゆる産業や社会生活に取り入れられ、社会の在り方そのものが劇的に変わるとされています。

そうしたソサエティー5.0では、マニュアルに沿うだけのような定型的な仕事は、AIに置き換えが可能になります。一方でAIは、膨大な文章を検索できても、その意味を理解できません。現実社会を意味付けして、幸せや豊かさを追求できるのは、人間をおいて他はありません。
そんな社会に共通して求められる力を、報告書は、(1)文章や情報を正確に読み解き、対話する力(2)科学的に思考・吟味し活用する力(3)価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力……と整理しました。新奇なものはありません。今までの学校教育で、大なり小なり育もうとしてきた力です。何も「これまで誰も見たことのない特殊な能力では決してない」(報告書)のです。

文系・理系の枠を超えて

そうは言っても、今まで通りでよいとは限りません。報告書は、今後取り組むべき政策の方向性として、I:「公正に個別最適化された学び」を実現する多様な学習機会と場の提供 II:基礎的読解力、数学的思考力などの基盤的な学力や情報活用能力をすべての児童生徒が習得 III:文理分断からの脱却……を挙げています。

このうちIIは、新しい学習指導要領で既に打ち出しています。IIIについても、小学校でプログラミング教育を、高校で全生徒にコンピューターや情報ネットワークの仕組みなどを学ばせる「情報I」をそれぞれ必修化することなどが盛り込まれていますが、ここでは、そうした趣旨を一歩進め、「STEAM教育」(Science=科学、Technology=技術、Engineering=工学、Art=芸術、Mathematics=数学)を「思考の基盤」と捉え、専門教育としてではなく、すべての生徒に学ばせようとしています。もう文系・理系に分けている場合ではありません。

学び方も変わってくるようです。それがIです。学校のバージョン1.0が「勉強」の時代、現在のバージョン2.0が「学習」の時代とするなら、新たな技術も活用して、学校の教室にとどまらず、大学やNPO・企業、地域などさまざまな場に拡大して、いつでも、どこでも学べるようにする学校バージョン3.0を「学び」の時代と位置付けています。
新たな時代と技術の進展に対応するには、まずは私たちの発想を転換する必要があるのかもしれません。

(筆者:渡辺敦司)

※文部科学省「Society 5.0 に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」
http://www.mext.go.jp/a_menu/society/index.htm

※ソサエティー5.0(政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/cam/s5/

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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