小中一貫校、なぜ増え続ける?

新学期が始まって1か月以上が過ぎ、子どもたちの学校生活も落ち着いたころでしょう。ところで少子化により、今春も多くの学校が統廃合となりました。そうしたなかで、小学校と中学校を一体化させた「義務教育学校」などの小中一貫教育校も、次々と誕生しています。小中一貫教育とはどういうもので、何を目指しているのでしょう。

義務教育学校など制度化

小学校と中学校の9年間を一貫させた教育を行おうという試みは、2000年代に入って、広島県呉市や東京都品川区など各地で、自治体独自の取り組みとして始まりました。
学力向上や、小学校とは環境の違った中学校生活になじめない「中1ギャップ」を避けることなどが主な目的でした。制度上はあくまでも別々の学校でしたが、当時から「〇〇学園」などという通称を使い、一体の学校として運営していたところも少なくありません。小学校と中学校の校長を兼務させる形で、より一体化を図った自治体もあります。

小学校6年間、中学校3年間という区切りが、今どきの子どもの発達段階に合っていないという見方もありました。そこで6・3制だけでなく、5・4制や4・3・2制など、さまざまな区切りが工夫されました。
そうしたなか、2014年には教育再生実行会議の提言(7月)を受けた中央教育審議会が、小中一貫教育の制度化を答申(12月)。学校教育法などの改正により、2016年度から、小学校や中学校とは別の学校種として義務教育学校を新設するとともに、「小中一貫型小学校・中学校」(併設型と連携型の2種類)も制度化されました。

これらは、中高一貫教育校(中等教育学校・併設型中高一貫教育校・連携型中高一貫教育校)にならったものです。
文部科学省の調査によると、2017年度の段階では、義務教育学校48校(うち国立2校)、併設型一貫校253校(うち国立1校、私立6校)が設置されていました(連携型はゼロ)。制度化された小中一貫教育校とはならないまでも、教員が情報交換や交流を行いながら運営する「小中連携教育」を実施する市区町村は72%に上っていました。

「縦の統合」の意味合いも

小中一貫・小中連携教育をめぐっては近年、山間地や離島などで、閉校の危機にある小学校と中学校を義務教育学校などに衣替えして、学校を存続させようという動きがあります。文科省も、「縦の統合」と称して勧めていました。
学校は今も昔も、地域の核です。地域に学校がなくなると、子育て世帯も地域を離れてしまい、過疎化がいっそう進む例も各地で見られます。地方創生のうえでも、学校は貴重な存在です。
もっと積極的な意義もあります。今年度から移行措置が始まった新学習指導要領は、幼小・小中・中高といった学校間の接続を重視しています。また、「社会に開かれた教育課程」を打ち出し、地域の人たちと一緒になって資質・能力を育成するよう求めています。地域から学ぶことを通して、ローカル(地域)だけでなくグローバル(地球規模)な課題にも対応できる資質・能力を育成し、将来の地域や日本、世界で活躍できる子どもたちを育てよう……という考え方です。
小中一貫教育校には、そうした教育の先導校としての役割も期待されているのです。

(筆者:渡辺敦司)

※小中一貫教育の推進について(文科省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ikkan/1357575.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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