自己肯定感、少し高まった?日本の高校生

社会がますます複雑化・高度化する一方、少子高齢化が進むなかでは、一人ひとりの子どもに意欲を持って活躍できるような資質・能力を付けてあげることが、ますます求められます。しかし、その際にブレーキとなりそうなのが、自己肯定感の低さです。
控えめなのは日本人の特性ともいえますが、グローバル化の進展で言葉や文化の違う人々と一緒に仕事や生活をしていくには、物おじせずに接する積極的な姿勢も必要です。
日本の子どもの自己肯定感は今、どうなっているのでしょう。

米中韓と比べれば低いまま

独立行政法人国立青少年教育振興機構は、日本・米国・中国・韓国の4か国で、高校生を対象とした国際比較調査を行っています。
2017年の結果を見ると、「私は価値のある人間だと思う」と回答したのは、日本が44.9%で、他の3か国の80.2~83.8%を大きく下回っています。他の項目でも、▽「私は人とうまく協力できるほうだと思う」各71.0%、87.1~89.5%▽「私は辛いことがあっても乗り越えられると思う」各68.7%、80.4~89.8%▽「私は怒った時や興奮している時でも自分をコントロールできるほうだ」各63.6%、74.3~82.4%▽「私は努力すれば大体のことができると思う」各60.5%、78.3~86.1%▽「私はいまの自分に満足している」各41.5%、62.2~75.6%▽「体力に自信がある」各37.9%、51.6~72.5%……と、国際的には依然として低いままです。

ただ、2010年の調査結果(当時は日本青少年研究所が実施)と比べると、「私は価値のある人間だと思う」は8.8ポイント増、「私は人とうまく協力できるほうだと思う」は6.6ポイント増、「私は辛いことがあっても乗り越えられると思う」は8.6ポイント増など、以前に比べれば自己肯定感は高まっています。
同機構の明石要一・青少年教育研究センター長(千葉敬愛短大学長)は「自己肯定感は少しは上向きかけているが、『まだまだの感』がある」としています。

新指導要領の「三つの柱」で更なる向上を

自己肯定感をめぐっては、下村博文氏が文部科学相の時(2012年12月~15年10月)、事あるごとに子どもの自己肯定感の低さを問題視し、その向上を図るよう呼び掛けてきました。
一方、その下村文科相が2014年11月に改訂を諮問した新学習指導要領(小中学校は17年3月、高校は18年3月に告示)では、どの校種・どの教科などでも共通に、(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等……の三つの柱で資質・能力を育成することにしています。
しかも、これらはバラバラに育成されるものではなく、一体で育み、子どもたちに「生きる力」を付けさせることが求められています。そして、これら三つの柱は、経済協力開発機構(OECD)が進めている、これからの社会で求められるコンピテンシー(資質・能力)の議論も参考にしたものです。

学習や学校生活を通して、子どもたちに成功体験を積み重ねさせることで、自己肯定感を育んでいくことが今後ますます求められるでしょう。調査結果によると、保護者との関わりの数値は中国に次いで高くなっていますが、自己肯定感の基盤には良好な親子関係があることも、忘れないでおきたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※高校生の心と体の健康に関する意識調査—日本・米国・中国・韓国の比較—(2018年3月)
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/126/

※指導要領改訂の中教審答申(2016年12月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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