心配な大学生の教育費負担

新学期から1か月。大学などの新入生は、アルバイトを始めたり、奨学金の手続きをしたりと、今後4年間の学生生活に向けて、あわただしい準備を続けている人も少なくないことでしょう。一方で、予想以上にお金が掛かるものだと頭を抱えているかもしれません。これから進学を考えている生徒や保護者にとっても、授業料や学生生活費をどう確保するかは重大です。改めて現状と課題を考えてみましょう。

授業料の高い私大生が不利に!?

日本学生支援機構が隔年で実施している「学生生活調査」の2016年度結果によると、大学(昼間部)の学部生で、年間の学費と生活費を合計した「学生生活費」は平均188万4,200円でした。2年前に比べて2万2,100円(1.2%)増えています。
これに対して収入額は、5,500円(0.3%)減の196万5,900円。内訳は、「家庭からの給付」が60.1%(2年前に比べ0.5ポイント減)に当たる118万700円(同1万3,100円減)、「奨学金」が19.6%(同0.7ポイント減)に当たる38万5300円(同1万4,700円減)と割合・額とも縮小する一方、アルバイトが18.1%(同1.8ポイント増)に当たる35万6,100円と、3万4,300円も増えています。

奨学金が減ったのは、調査に協力した濱中義隆・国立教育政策研究所総括研究官によると、第2種(有利子)の利用減が大きいためです。政府は「有利子から無利子へ」の政策を掲げて近年、第1種(無利子)の採用枠を拡大しています。しかし第1種は国立大学生の利用が17.5%なのに対して、私立は12.6%と低くなっています。
授業料の減免を受けているのも国立11.2%、私立6.9%と差があり、しかも国立は全額から半額以上の免除が多いのに対して、私立は全額未満から半額未満が多くなっています。濱中総括研究官は、大学進学率が50%を超えるなかで「私立大学に進学せざるを得ない学生に対してより大きな学費負担を課すことは社会的に公正であるとは言えないだろう」と指摘しています。

深刻な「ローン回避傾向」

授業料負担の在り方を考えるに当たっては、昨年9月に日本私立大学連盟が開催したフォーラム「いまどきの学生の懐事情~学生生活のいま~」で出た指摘が参考になります。小林雅之・東京大学教授は、日本では奨学金制度ができた1943年以来、「教育費負担の家族主義」が基本的に70年以上も続いており、低所得層ほど卒業後の返還を不安に思って奨学金を利用しない「ローン回避傾向」が深刻になっていると指摘。北條英勝・武蔵野大学教授も、同連盟の調査から、私大では経済的に余裕のある学生とない学生の二極化が進んでいるとの見方を示していました。

ローン回避傾向によりアルバイトの比率が高まっているのも、学業に影響が出ないかと心配です。「ブラックバイト」の名付け親である大内裕和・中京大学教授は、給付型奨学金や新所得連動返還型奨学金制度の創設を「大きな一歩」だと評価しながらも、「人数・額ともに、あまりにも少ない」と批判していました。
大卒人材の増加は、本人だけでなく社会全体にとっても大きな利益となります。人工知能(AI)などの登場に伴って、ますます高度な人材が必要とされるなか、幅広い視野から教育費負担の問題を考えたいものです。

(筆者:渡辺敦司)

※日本学生支援機構 2016年度学生生活調査
https://www.jasso.go.jp/about/statistics/gakusei_chosa/2016.html

※私立大学フォーラム「いまどきの学生の懐事情~学生生活のいま~」
http://www.shidairen.or.jp/blog/info_c/forum_c/2017/09/25/21483

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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