全国学力調査、なぜ来年はA・B問題を統合?

2017年度も、もうすぐ終わりです。新年度に入った4月17日には、小学6年生と中学3年生を対象に「全国学力・学習状況調査」(以下、全国学力調査)が行われます。
国語と算数・数学では毎年それぞれ「主に知識」を問うA問題と、「主に活用」の力を問うB問題が出題されていますが、2019年度にはA・B問題を統合する方針だといいます。なぜなのでしょうか。

「実力テスト」ではなく指導改善が目的

全国学力調査は2007年度から実施されており、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、(1)全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る(2)学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる(3)そのような取り組みを通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する……という、重層的な目的があります。

決して実力テストのようなものではなく、現在の学校全体や在籍する子ども一人ひとりの学力の課題を明らかにして、残り1年で授業の改善をはじめとした学習指導によって、子どもに確かな学力を付けさせて各学校を卒業させるとともに、他の学年や次年度以降の指導にも生かします。さらに各自治体には、得られたデータをもとに域内の学力を向上させるため、予算措置を含めた施策の展開が求められます。

全国学力調査は、1950〜60年代にも行われていた経緯から「全国学力テスト」と略称されることが多いのですが、教科の問題だけでなく質問紙調査も併せて課題を浮き彫りにすること、先のような目的を考えると「テスト」と呼ぶにはふさわしくないことなどを受けて、最近では関係者の間だけでなく文部科学省も「全国学調」という略称で呼ぶことが増えてきています。

新指導要領を先取り

ところで全国学力調査では、毎年出題される2教科についてはA・Bの両問題が課されてきました。これには「知識」だけでなく「活用」の力が重要であるというメッセージも込められていたのですが、結果を受け止める自治体や学校の中には、知識と活用をバラバラに育成しようとしたり、活用の力を伸ばすにはまず知識の習得を優先しなければいけないと考えたりする向きが少なくありませんでした。

しかし、学校教育法に規定される「学力の3要素」(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体的に学習に取り組む態度)は、相互に関連すると考えられています。実際、A問題とB問題の成績には強い相関関係があることがわかっており、活用の学習を通して知識が定着するという指摘もあります。

しかも新指導要領(小学校は2020年度から、中学校は21年度から全面実施)では、各教科などで共通する(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力等(3)学びに向かう力・人間性等……の「資質・能力の三つの柱」を一体で育成する方向性を明確にしています。「主体的・対話的で深い学び」は、そのための手法です。
そうした新学習指導要領の趣旨を踏まえた指導の改善・充実に今から乗り出すため、知識と活用を一体的に問う形で調査を行うことにしたのです。なお、2018年度は3年ごとに行われる理科も実施されますが、こちらは12年度当初から知識と活用が一体で出題されています。

(筆者:渡辺敦司)

※全国的な学力調査(文部科学省ホームページ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/index.htm

※全国的な学力調査に関する専門家会議(同)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/130/index.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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