大学など高等教育の費用負担、どう考えればよい?

国立大学で前期試験の合格発表も始まり、受験生は本格的に進学先を決断する時期を迎えています。一方で保護者にとっては、入学金や授業料などを収めるのに、頭が重い時期かもしれません。保護者世代から比べれば倍増した感のある、大学など高等教育の費用負担をどう考えればよいのでしょうか。

無償化は「真に必要な子どもたち」に限定

「高等教育の無償化」が話題になっています。安倍晋三首相が、幼児教育の無償化とともに昨年10月の総選挙に訴えてまでも、消費増税(2019年10月から)の使い道を見直す理由の一つに挙げて「必ず実現する」と語っていたものです。
ただ、幼児教育と違って、当初から「真に必要な子供たちに限って」という条件が付いていました。「どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば専修学校、大学に進学できる社会へと改革する」(昨年9月の衆院解散表明会見)ためであって、幅広い学生への支援策は奨学金制度の充実など別建てになっています。
とはいえ「真に必要な子どもたち」の範囲は、明確に示されてきませんでした。そのため文部科学省は1月末に専門家会議を発足させ、今夏までに対象者の要件などを提言してもらいたい考えです。

初会合では、(1)学校種(特に短大、高専、専門学校)に応じた給付の在り方(2)支援対象者の要件の在り方(入学前の本人の学習意欲の確認方法、在学中の学修状況の確認方法等)(3)外部者の登用など対象となる大学等の要件についてのガイドライン……などの検討事項が示されています。
ただ、このように対象となる学校に条件を付けることには、「大学の自治に対する介入だ」(国立大学協会の山極寿一会長=京都大学長)といった批判も出ています。

大学だけでも2人に1人が進学

高等教育の無償化論議をめぐっては、「義務教育ではないし、卒業すれば高収入を得られるのだから、無償化する必要はない」という主張が、根強くあります。確かに、保護者世代より上の人にとっては、そう思えるのも無理はありません。
しかし、進学をめぐる状況は一変しています。1990年度には24.6%と、まだ高校卒業者の4人に1人でしかなかった大学進学率(浪人を含む)は、6年後の96年度には33.4%と3人に1人になり、2009年度にはついに50.2%と、2人に1人になりました。近年は伸び悩んでいるとはいえ、2017年度の大学・短大進学率は57.3%。専門学校などを含めた高等教育機関への進学率は80%に達しています。

同年代のほんの一部しか高等教育機関に進学しない状況は「エリート段階」、進学率15~50%は「マス段階」、50%を超えると「ユニバーサル段階」と呼ばれます。経済格差や就職・内定格差、奨学金返済の重さなどが指摘されるなか、既に大学は、一部エリートのものではなく、誰しもが通おうと思えば通えるユニバーサル(一般的)なものになっています。
日本は国際的に見ても、高等教育機関への公的な財政支出が少なく、授業料などの費用負担の多くを家計(保護者)に依存している国です。それもエリート段階には当然だったかもしれませんが、ユニバーサル段階にあっては、また違った発想で負担軽減策を考える必要があるでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※高等教育段階における負担軽減措置に関する専門家会議
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/086/index.htm

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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