免許外の担任、なぜなくならない? 依然1万件余り

これからの時代を生きる子どもの育成には、質の高い先生の役割が重要であることは言うまでもありません。先生の質を最低限保証するものが、教員免許です。しかし現在でも、免許を持たない教科を担当する「免許外教科担任」が、年間1万件ほどあります。
文部科学省は先頃、有識者や教育委員会の担当者などから成る調査研究協力者会議を立ち上げて、対策に乗り出しました。免許外教科担任の現状は、どうなっているのでしょうか。

約20年前に比べれば3分の1でも

小中高などの教員は、担当する校種や教科に応じた免許状を持っていなければならない、というのが教員免許制度の原則です。これに対して「免許外教科担任制度」とは、校内の教員に、免許を持たない教科を担任してもらうものです。都道府県教委に申請のうえ、1年ごとに認められます。

1994年度には、免許外担任の許可件数が中高合わせて3万4,000件余りありました。当時は校内で教員一人当たりの授業の持ち時間数をならすために免許外の授業を持たせることが横行しており、文部省(当時)は見直しを通知しました。その後、現場の努力もあって件数は減少したものの、2014~16年度は1万1,000件前後で推移しています。
政府は昨年6月に閣議決定した「規制改革実施計画」の中で、教育の質が心配されることはもとより教員の負担にもなっているとして、インターネット授業などの「遠隔教育」も含めて対策を取るよう提言しました。今回の協力者会議は、これを受けて設けられたものです。

もはや現場の努力だけでは限界

しかし、どうやら現場には、免許外担任をゼロにできない事情があるようです。
文科省の調査を見ても、都道府県教委の許可理由として、確かに今でも「教員間の持ち時間数の平準化」(15%)や「校務分掌も含めた勤務時間の平準化」(32%)はあるものの、「定数内では全教科の免許を持った教員を配置できないため」(85%)や「免許保有者が病気休暇や育児休業中であるため」(64%)といった理由で免許を持った教員がいなかったり、免許を持った教員がいても「少人数指導・TT(チーム・ティーチング)を行うため」(40%)や「特別支援教育や外国人児童生徒への指導のため」(45%)、他の教員に教科外の担任を肩代わりしてもらわなければならなかったりする実態があるのです。

これに拍車を掛けるのが、少子化に伴う小規模校化です。公立小・中学校の場合、1学級に1人の教員を配置するというのが教職員定数の基本ですから、学級数が減っていけば当然、1校当たりの教員も少なくなります。中山間地域や離島の学校を多く抱える都道府県では、更に深刻です。そのうえ、近年はベテラン層の大量退職に伴って新規採用も増えましたが、一時は極端な採用抑制によって、実技系教科の募集がほとんどできない時期もありました。実際、免許外担任の許可件数のうち、中学校の80%、高校の46%を実技系教科が占めています。

さらに10年以上、国の財政難に伴って公立学校の計画的な教職員定数改善が認められてきませんでした。そうした中でも、学力向上や特別支援教育・外国人指導といった課題に、指導力のある教員を振り向けなければいけません。もはや現場の努力だけでは、限界があるのです。

(筆者:渡辺敦司)

※免許外教科担任制度の在り方に関する調査研究協力者会議
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/136/index.htm

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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