頭の痛い小学校~高校の教育費負担

文部科学省の2016年度「子供の学習費調査」によると、保護者の教育費負担はほぼ横ばいの状況で、軽減の兆しは見られません。公立高校では、就学支援金制度により、年収が一定以下の家庭の子どもは授業料が実質無償となっていますが、その代わりに学習塾などの学校外教育費が増加しています。政府は、幼児教育の無償化、大学など高等教育費の負担軽減などの方針を打ち出していますが、小学校から高校までの教育費負担も保護者にとっては依然として頭の痛い問題のようです。

幼稚園から高校まで私立だと1,770万円

調査は、保護者が1年間で支出する教育費の実態を調べるため、1994年度から2年ごとに実施しており、2016年度は幼稚園から高校に通う子どもを持つ保護者約2万9,000人を対象に行いました。
学校の授業料、学校外の学習塾・おけいこ事の費用など、子どもの教育のため1年間で支出した子ども1人当たりの「学習費総額」は、公立幼稚園が23万3,947円、私立幼稚園が48万2,392円、公立小学校が32万2,310円、私立小学校が152万8,237円、公立中学校が47万8,554円、私立中学校が132万6,933円、公立高校(全日制)が45万862円、私立高校(同)が104万168円となっており、公立幼稚園と高校(公私立共に)で前回調査よりやや増加、私立幼稚園はやや減少した他は、ほぼ横ばいでした。
幼稚園から高校まで私立に通った場合の教育費総額は約1,770万円、逆にすべて公立の場合は約540万円で、その差は3.28倍となっています。
「学習費総額」が高い水準のまま横ばい、またはやや増加の傾向にある原因の一つとして、学習塾などの「学校外活動費」の負担が挙げられます。特に受験を控えた私立小学校6年生は約76万4,000円、公立中学校3年生は約41万6,000円で、他の学年に比べて突出しています。また全体的に、各学校種とも学年が上がるにつれて学校外活動費が増えています。

重い学習塾費、格差拡大の心配も

近年では、高校1・2年生の学校外活動費が増加しているのが注目されます。たとえば、公立高校1年生の学校外活動費は2014年度の約12万9,000円から2016年度は約14万4,000円に、私立高校2年生も14年度の約25万6,000円が16年度は約28万8,000円にアップしています。公私立ともに高校3年生になるのを待たず、高校1・2年生のうちから学習塾に通い始める生徒が増えたようです。
「学習塾費」を見ると、小学校は公立5万6,864円、私立が22万1,534円。また中学校は公立が20万2,498円、私立が14万3,694円で、公立中学校の子どものほうが学習塾費の支出が多くなっています。高校は公立が10万6,767円、私立が17万1,462円となっており、公立高校生徒の学習塾費が10万円を超えました。
世帯年収が「400万円未満」と「1,200万円以上」の家庭の学校外活動費を比べると、公立高校では4.2倍(約30万円)、私立高校では約3.7倍(約34万円)の開きがありました。年収の高い家庭ほど学習塾などへの支出が多いのは、ある意味、当然とも言えますが、家庭の経済力に起因する学力格差が広がることが懸念されます。
どうやら教育費の問題は、学校教育費だけでなく、学習塾など学校外の教育費負担も併せて考えなければならないようです。

(筆者:斎藤剛史)

※平成28年度子供の学習費調査
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/1399308.htm

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A