歴史を「考える」科目に

「鳴くよウグイス平安京」(794年・平安京遷都)など、日本史や世界史の暗記で苦労した人も多いと思います。覚えるべき用語が多すぎるため、歴史を暗記科目として敬遠している人も少なくないでしょう。
高校と大学の歴史教員らで組織する「高大連携歴史教育研究会」は、高校の教科書と大学入試で使用する歴史用語を約半数に削減する「歴史系用語精選の提案」の第1次案をまとめました。覚える用語を精選して、高校の歴史を暗記科目から歴史的思考力を育成する科目へ転換しようというのが狙いです。

増え続ける用語が「暗記科目」化の原因に

同研究会によると、高校の日本史と世界史の教科書に載る用語は、1950年代には各1,300語程度だったのに対して、現在は各3,400~3,800語と、3倍近くにも増えています。原因は、大学入試で教科書にない細かな事実を問う問題が出されると、それが高校の教科書にも追加されることで、雪だるま式に増えためだと指摘しています。さらに、高校の歴史教科書では用語の重要度の区別がなく、人名・事件名に偏っていることもあり「平面的・羅列的に覚え続ける」必要がありました。このため歴史は、暗記科目と思われるようになってしまいました。
一方、新学習指導要領では、知識・技能の習得と同時に、思考力・判断力・表現力等の育成を重視しています。このため指導要領の基本方針を提言した中央教育審議会の答申も「地理歴史科の科目のねらいを実現するために必要な概念等に関する知識を明確化するなどして整理する」ことを求めています。新しい高校指導要領の歴史では、覚える用語の数を減らして、思考力などを育成する科目に変える必要があるということです。

思考力を問う大学入試に

同研究会は検討の結果、歴史用語を、現行の約半分に当たる世界史1,835語、日本史1,856語まで精選しました。精選案では、歴史を考えるうえで重要となる「市民革命」などの概念用語を重視する一方、細かすぎる人名や事件名などを大幅に削減したのが特徴です。たとえば、日本史の幕末・明治維新関係では「西郷隆盛」と「大久保利通」は残りましたが、「坂本龍馬」や「高杉晋作」は外されました。
同研究会では、関係学会などとも連携しながら2018(平成30)年2月末まで精選案へのアンケートを取り、3月末までに最終案をまとめる予定です。
だだ、新指導要領で高校の歴史は、日本史と世界史の近現代史を合わせた「歴史総合」と「世界史探究」「日本史探究」に再編されることになっています。精選案は現行の日本史Bと世界史Bを前提としているため、精選案に基づく教科書が作られることは「実現不可能」と同研究会も述べています。しかし、2021(平成33)年1月からセンター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト」の出題ガイドラインとすることで、高校の歴史の授業を思考力重視へと変えることができるとしています。
同じような高校教科書の用語削減では、生物について日本学術会議が大幅に削減を図った「重要語リスト」を作成しています。今後、生物や歴史の教科書の用語削減の動きが、大学入試や高校の授業の在り方をどう変えていくことになるのか注目されるところです。

(筆者:斎藤剛史)

※高等学校教科書および大学入試における歴史系用語精選の提案(第一次)およびアンケート実施
http://www.kodairen.u-ryukyu.ac.jp/new/new_91.html

プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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