これから国内外で不可欠な「協同問題解決能力」

経済協力開発機構(OECD)が2015(平成27)年のPISA(生徒の学習到達度調査)の一環として実施した「協同問題解決能力調査」で、日本は参加52か国・地域中2位、OECD加盟32か国中1位という好成績でした。協同問題解決能力とはいったい何で、なぜOECDが調査する必要があったのでしょうか。

チームで協力できるかどうか

15歳(日本では高校1年生)を対象に3年に一度実施されるPISAでは毎回、読解力・数学的リテラシー(活用能力)・科学的リテラシーの3分野が出題されており(うち1分野を中心分野として詳細に出題・分析)、2015(平成27)年調査の結果は、学習指導要領の改訂を提言した中央教育審議会の答申が出る直前の16(平成28)年12月に発表されています。中心3分野の他にもオプション調査が行われ、今回は「生徒のwell-being(健やかさ・幸福度)調査」などとともに、革新分野として協同問題解決能力調査が出題されました。

「問題解決能力」であれば2003(平成15)年と12(平成24)年にも出題されているのですが、今回は「協同」が入っているのがミソです。
協同はCollaborativeの訳で、「共同」「協調」とも訳され、最近の教育改革でよく使われる「協働」も同じことです。一人で問題を解決する能力だけでなく、複数の人とチームを作り、協力して課題解決ができるかどうかの力を問うています。 PISAは今回から中心3分野も含めて全部コンピューターを使って解答する方式になっており、協同問題解決能力も、架空の仲間とチャットをするような場面を設定し、その場その場で適当な会話文を選んでいくことによって解答していきます。実際にやってみると何だかゲームみたいですが、(1)共通理解の構築・維持(2)問題解決に対する適切な行動(3)チーム組織の構築・維持……という3つのコンピテンシー(資質・能力)を設定し、12のスキル(技能)を測るという厳密な方法が取られています。

新指導要領や入学者選抜改革でも問われる

OECDは現在、2030年に向けた教育の在り方を世界に提案する「Education 2030」プロジェクトを実施しています。協同問題解決能力も、その一環です。さらに次回の2018(平成30)年調査では、「世界で生きるためのグローバル・コンピテンス」(グローバルコミュニケーション力、文化横断的・相互的なものの考え方、多様性の尊重など)を出題する予定です。こうした資質・能力が、ますますグローバル化が進む21世紀を生き抜く子どもたちには不可欠になる……と考えてのことです。

実は、指導要領の改訂も、大学入学者選抜をはじめとした「高大接続改革」も、こうした資質・能力の育成を視野に入れて行われています。入学者選抜改革では「学力の3要素」(<1>知識・技能<2>思考力・判断力・表現力<3>主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)をすべて評価して合否を判定し、大学教育につなげることを求めていますが、(3)にしっかり「協働」(Collaborative)の文字が入っていることが注目されます。
PISAの協同問題解決能力調査は開発途上ですし、主要3分野が高いほど成績もよくなる傾向にありますから、今回の結果には一喜一憂すべきではないかもしれません。ただ、これからの世界・社会を生きる子どもたちにどのような資質・能力が求められるのか……というOECDからのメッセージは、しっかりと受け取る必要があるでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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