増える「大卒フリーター」に備えを!

戦後2番目に長い景気拡大を受けて、大卒や高卒の就職戦線は空前の「売り手市場」とも言われています。しかし実態は、団塊の世代が大量退職して以降の人材不足が続いている側面が否めません。さらに産業構造の変化に伴って、求める職種と求人の間にはミスマッチがあることも指摘されています。
これから大学などへの進学を目指す子どもたちにとっても、無縁ではないようです。

15年間で割合は4倍に

独立行政法人労働政策研究・研修機構は、2001(平成13)年以来5年ごとに「若者のワークスタイル」を調査しています。このほどまとまった2016(平成28)年調査の結果、25~29歳のフリーター(パート・アルバイト、学生時代を除く)経験者のうち、40.6%を大卒・大学院修了者が占めました。前回(2011<平成23>年)に比べると13.4ポイント増、01(同13)年の4倍です。
もちろん、これには就職氷河期にフリーターとならざるを得なかった者がそのまま正規就職できない状態が続いていることや、そもそも大学進学率が上昇していることも背景にあるでしょう。ただ、進学率の上昇には、高卒就職市場が急速に縮小したことを反映した側面もあります。今は高卒人材が不足しているといっても「金の卵」として優秀な人材の補充が求められているということであり、そうでなければ大学や短大、専門学校などで、高い資質・能力を身に付けなければいけません。問題は、進学する者にそれだけの覚悟があるかどうかです。

小学校からの「キャリア教育」も重要

調査では、フリーターを(1)就きたい仕事のための勉強や準備、修業期間としての「ステップアップ型」(2)仕事以外にやりたいことがある「夢追求型」(3)やりたいことを探したい、正社員になりたくないなどの「モラトリアム型」(4)正社員になれない、家庭の事情などの「やむを得ず型」……に分類しています。
前回調査と比べると、男性は「夢追求型」が18.5%→12.0%に、「モラトリアム型」が28.2%→24.8%に縮小する一方、「やむを得ず型」が30.1%→34.6%に、「ステップアップ型」が23.1%→28.6%に拡大しています。

これに対して女性では、「モラトリアム型」が35.2%→23.7%と急速に縮小する一方、「夢追求型」が12.3%→14.8%、「やむを得ず型」が31.5%→34.7%、「ステップアップ型」が21.0%→26.7%と、それぞれ拡大しています。
「モラトリアム型」は別としても、「やむを得ず型」でフリーターを選ばざるを得ない者や、「夢追求型」「ステップアップ型」も一定層は存在します。終身雇用制が崩れつつあり、「ブラック企業」の存在など雇用環境が悪化するなかでは、転職も当たり前になっています。ステップアップのためには、政府も拡大を進めようとしている「社会人の学び直し」も不可欠です。

近年は大学なども就職対策に力を入れていますが、だからといって学生の側が受け身の姿勢のままでは、内定を勝ち取ることは難しくなります。新学習指導要領でも、小学校から学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付ける「キャリア教育」が明記されました。
将来何がしたいか、そのためにはどういう努力をすべきか、一人ひとりがキャリアプランを真剣に考える必要がありそうです。

(筆者:渡辺敦司)

※第4回若者のワークスタイル調査
http://www.jil.go.jp/press/documents/20171020.pdf

※小学校学習指導要領(2017年3月告示)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/05/12/1384661_4_2.pdf

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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