英語4技能の力がなぜ必要なのか

大学入試センター試験に代わって2020(平成32)年度から導入される「大学入学共通テスト」では、大学入試センターが出題する問題とは別に、英語に関して「聞く・読む・話す・書く」の4技能をすべて評価するため、外部の資格・検定試験を活用することになりました。
これにより、大学入学共通テスト(2021年度に大学入学するための入試選抜)から、志望する大学によっては、共通テスト受験に先立つ高校3年生の4~12月に、英検やGTECなどの外部検定を受けておく必要があります(2回まで可能)。なぜ、このような方式を取ることになったのでしょうか。

国内外でグローバル化に備えるため

国境を越えた人やモノの交流がますます盛んになる現代にあっては、社会・経済の諸活動は世界規模で行われるのが当たり前の時代になっています。そうしたなか、「グローバル人材の育成」は、決して海外でバリバリ仕事をする一部のエリート層だけを対象に考えていればよいわけではありません。
今や製造業は工場を海外に展開するのが当たり前ですし、農業も品質の高い産品を高価格で輸出することが盛んになっています。「爆買い」ブームが一段落した今も、国内の主要な観光地は外国人観光客であふれています。国内にいるだけでも、グローバル化への対応が不可欠です。
もちろん世界には、英語を使えない人たちも多く存在します。それでも、まずは国際共通語として定着している英語を使えるようになって、異質な文化や考えを持つ人たちと積極的にコミュニケーションする資質・能力を身に付けさせることが、一番確実な道であることは間違いありません。
2020(平成32)年の東京オリンピック・パラリンピックでは、さらに多くの外国人が来日することが見込まれており、グローバル教育を進める好機です。だからこそ文部科学省は2020(平成32)年度を「ターゲットイヤー」と狙いを定め、学習指導要領を改訂して小学校高学年から英語を教科化するとともに、大学入学者選抜改革でも共通テストに英語4技能評価を入れることにしたのです。進学後の大学でも、グローバル人材の育成が急務になっていることは言うまでもありません。

これまでの入試は「聞く」「読む」が中心

ところで現行の指導要領でも、4技能の育成が重視されています。4技能を自在に使いこなせるようでなければ、実際の場面で英語を使ってコミュニケーションを取ることができないからです。小学校高学年から「外国語活動」を必修化して「聞く」「話す」を中心に指導を始めているのも、高校で英語の授業を英語で行うことを基本にしているのも、そのためです。高校英語の必履修科目の名称が「コミュニケーション英語I」とされたのには、4技能をフル活用して積極的にコミュニケーションが取れるようになってほしいという願いが込められています。
しかし、現行の大学入試が依然としてペーパーテスト中心で、センター試験でもリスニング問題が出される程度では、実質的に「聞く」「読む」の2技能しか問われないことになります。これに引きずられて本来、4技能をバランスよく育成すべき高校の英語の授業が、「入試対策」として2技能中心にならざるを得なくなっているのが現状です。そんな状態がいつまでも続いては、グローバル人材の育成を掲げる大学も、困ってしまいます。
とはいえ、引き続き50万人以上が受けると想定される共通テストで、新たに「話す」「書く」の評価も独自に実施しようとするには、莫大な時間とコストが掛かり、結果として試験日程や受検料にも跳ね返ってしまいますから、とても現実的ではありません。そのため、既に4技能評価で豊富なノウハウと実績のある外部検定を活用することにしたのです。

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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