大学入学共通テスト、全容わかるのは1年前!?

2021(平成33)年度大学入学者選抜(現在の中学3年生が2020<平成32>年度中に受験)が、大きく変わります。大学入試センター試験に代わって、思考力・判断力・表現力を中心に問う「大学入学共通テスト」が導入され、それに伴って各大学の個別選抜も、より幅広い学力を多面的・総合的に評価して合否が決められることになります。
ただ、肝心の共通テストがどのようなものになるかは、1年前にならないと見えてこないかもしれません。作問や採点をどうするか、いまだに模索が続いているからです。

作問や採点に依然として課題

共通テストは、引き続き大学入試センターが実施業務を担うことになっています。同センターは先頃、2017(平成29)年度のシンポジウム「大学入学者選抜の新展開—新共通テストの課題と個別選抜改革の方向性—」を開催し、その中で2017・2018(平成29・平成30)年度に行うプレテスト(試行テスト)を「試行調査」と呼ぶことにしたと明らかにしました。出題されたような問題が、本番でも出されるという誤解を避けるためだと説明しています。

共通テストをめぐっては、既に2016(平成28)年度の11月と2〜3月に国語と数学のモデル問題を大学1年生に解いてもらうモニター調査が行われています。
これを踏まえて2017(平成29)年11月には高校を会場として2年生以上約5万人を対象に、2018(平成30)年11月には大学を会場として対象も3年生約10万人に拡大して、6教科の試行調査を実施。2019(平成31)年度には出題教科・科目を正式に決めたうえで、本番を想定した「確認プレテスト」を実施することにしています。

シンポでは、同センターの担当者が現在、「創造性と持続可能性」を合言葉に作問の在り方を検討していること、まだ難易度のバランス調整や採点の体制に課題があることも明かしました。試行調査の間に、そうした課題も解決したい考えです。裏を返せば、まだ作問の安定性が確保されていないということであり、本番に近いテストの全容が姿を現すのは、2019(平成31)年度のプレテストということになります。

肝心なのは「対策」より普段の授業

ただ本来は、もっと余裕を持って本番に臨むはずでした。文部科学省は2015(平成27)年1月の段階で、中央教育審議会の答申(2014<平成26>年12月)を受け、2017(平成29)年度に「高等学校基礎学力テスト」(現在の「高校生のための学びの基礎診断」)のプレテストを実施し、それを踏まえて2018(平成30)年度には「大学入学希望者学力評価テスト」(同共通テスト)のプレテストを実施し、満を持して2019(平成31)年度に基礎テストを、2020(平成32)年度に学力評価テストを導入する方針でした。

しかし二つの新テストの検討は、高大接続システム改革会議(2015<平成27>年3月~2016<平成28>年3月)、文科省改革推進本部・高大接続改革チーム(2016<平成28>年4月から)を経て、基礎診断はセンターによる実施から民間テストの認定制度に、共通テストは複数回実施を諦めて記述式問題を導入するなど中教審答申とは大きく形が変わり、それに伴って当然、準備も遅れています。それでも東京五輪・パラリンピックが開催される2020(平成32)年を「ターゲットイヤー」にして諸改革をそろえるという政府方針を踏まえたスケジュールに、変更はありません。

そうなると、どんな問題がどのくらい出るかを見てから「共通テスト対策」をしようとしても、間に合いません。高校はもとより、中学校や小学校の時代から、普段の授業の中で思考力・判断力・表現力をしっかり身に付けていくことが求められます。実はそうした授業の改善も、高大接続改革の狙いなのです。 

※大学入試センター シンポジウム2017
http://www.dnc.ac.jp/news/20170929-01.html

(筆者:渡辺敦司)


2019年11月1日、文部科学省より2020年度(令和2年度)の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることが発表されました。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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