ネット時代のコミュニケーション能力、どう育てる?

インターネットのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などが普及するに従って、コミュニケーションの在り方にも揺らぎが起こっています。
一方で、仕事や社会生活の中で複雑な課題に相対するには、親しい仲間はもとより異質な他者とも協働して解決していこうとする力が、ますます必要になっていきます。子どもたちのコミュニケーション能力を、どのように育んでいけばよいのでしょうか。

コミュニケーション能力を重視しても守りの姿勢……議論は深められず?

文化庁が毎年行っている「国語に関する世論調査」では、言葉遣いや表現・慣用句の意味などの他、コミュニケーションに関する意識も調べています。
コミュニケーション能力は重要かどうかを聞くと、全体では「そう思う」が81.4%で、「どちらかと言えば、そう思う」を加えると96.4%がコミュニケーション能力の重要性を認識しています。これが16~19歳になると98.7%、20代では100.0%と、とりわけ若い世代がコミュニケーション能力を重視していることがわかります。

ただ、それも実際にはうまくコミュニケーションができないことの裏返しかもしれません。
「きちんとした言葉遣いができないと、社会から認めてもらえないという雰囲気があると感じる」(全体で74.8%)のは16~19歳で最も高く、90.8%を占めます。それが20代になると73.8%にがくんと落ちるものの、30代は80.4%、40代は85.6%にまで高まります。
最近の若者は「~させていただく」といった過剰な敬語を連発する問題も指摘されますが、それもコミュニケーションを間違えたくない守りの姿勢なのかもしれません。

表面的なコミュニケーションでは、お互いの考えを深めることはできません。
考え方の違う人との意見交換で「考えの近い人と話すときよりも、柔軟な態度を取る」(全体で55.5%)のは、16~19歳で73.7%、20代で75.4%に上り、30~50代の60%台と比べても高くなっています。そんな風潮が、意見表明や議論で「なるべく事を荒立てず、相手の気持ちになじむよう話し、人間関係を優先し自分の意見を主張しない傾向」(結果概要)に拍車を掛けているとしたら、民主主義の危機だ……と言っては大げさでしょうか。

「分かっていても…」を乗り越える教育を

ネット社会の中でも、若者は、本音を伝えやすい手段・方法が「直接会っての会話」(16~19歳93.4%、20代94.3%)であることはわかっています。誤解やトラブルを招きやすい手段・方法が「SNSやブログでのメッセージ」(各82.9%、72.1%)だという認識が他の世代に比べて高いことも、それだけ誤解やトラブルに見舞われていることの表れかもしれません。

新しい学習指導要領では、言語能力を「創造的・論理的思考」「感性・情緒」「他者とのコミュニケーション」に整理して、全教科等で資質・能力を育成しようとしています。大学入学者選抜をはじめとした高大接続改革で、学力の3要素の一つを「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」(主体性・多様性・協働性)と言い換えているのも、そうした流れと軌を一にしています。アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び、AL)の中で、コミュニケーション能力も高めるような授業や教育活動の充実が求められます。

※2016(平成28)年度「国語に関する世論調査」
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h28_chosa_kekka.pdf

※中教審答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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