全国学力・学習状況調査、なぜ公表を早める?

10月に入り、小・中学校では、8月末に公表された全国学力・学習状況調査の結果を受けて、先生方が授業の見直しに取り組み始めたことでしょう。文部科学省は来年度から、公表時期を1か月早めることにしています。どうしてでしょうか。

「8月下旬」から「7月中下旬」に

小学6年生と中学3年生を対象として毎年実施している全国学力・学習状況調査の時期に関しては、これまで、原則として「4月20日に最も近い火曜日」(2017<平成29>年度の場合は4月18日)としてきました。2018(平成30)年度も、これに沿って4月17日に実施することが決まっていますが、19(同31)年度からは「原則として、火~木曜日のうち4月18日に最も近い日」(19<同31>年度の場合は4月18日)とすることにしました。

一方、結果の提供・公表日は従来、8月下旬に設定されてきました。2017(平成29)年度の場合、教育委員会には8月18日に、学校には21日に提供され、報道などへの公表日は28日の夕方(新聞は29日付朝刊)でした。これを2018(平成30)年度からは、提供日を「7月中下旬」、公表日を「7月末頃」(いずれも予定)と、1か月早めたい考えです。

これについて、全国学力・学習状況調査の実施10年目を契機とした3月の「全国的な学力調査に関する専門家会議」のまとめは、「8月下旬に調査結果が提供されたとしても、学校としては夏季休業中に調査結果を分析することができない」と指摘。指導の改善・充実に生かすとしても、調査を受けた児童生徒が卒業するまでの期間が短いことから、少しでも早くから結果を生かした指導の改善・充実に反映してもらえるよう、早期化を提言しました。7月中下旬なら、夏休みの間にじっくり分析や授業研究に取り組み、夏休み明けすぐからの授業に生かせるわけです。

分析と指導改善には時間が必要

ここで改めて、全国学力・学習状況調査の意義を考えてみましょう。
新聞などでは、どうしても都道府県や市区町村の順位が大きく報道されます。2017(平成29)年度からは、都道府県並みに権限が広がった指定都市別の結果も、文科省が公表するようになりました。もちろん、地域単位の平均正答率というのも重要な指標になります。

しかし全国学力・学習状況調査は、学力コンテストではありません。あくまで各学校の指導の改善・充実や、そうした学校を支援する自治体の施策立案に生かしてもらうことが狙いです。その意味で、平均正答率の公表というのは、始まりにすぎません。そこから、どのような児童生徒や学校、域内の状況を分析し、指導の改善・充実に生かして学力を向上させるかが重要です。

また全国学力・学習状況調査は、小学校で5年間、中学校で2年間の成果を測っているのにすぎないこと、毎年実施するのは国語と算数・数学という限られた教科(理科や中学校英語は3年に1度)の、しかも幅広い学力の一部にすぎないということにも注意する必要があります。他の学年や、他教科も含めた指導の改善・充実に生かすにも、それだけ独自の分析を行う時間が、各学校で必要になります。

2018(平成30)年度からは、学校や学級の課題が一目でわかる「S-P表」といった新たな分析指標も提供されます。一人ひとりの学力を着実に身に付けさせるためにも、更なる改善に努めてほしいものです。

※2018年度以降の全国学力・学習状況調査について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/130/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/09/01/1394963_6_1.pdf

※全国的な学力調査の今後の改善方策について(まとめ)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/1383338.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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