通信制高校、自由に学べるけれど…<覚悟>も必要

通信制高校が今、存在感を増しつつあります。
不登校や発達障害など、全日制や定時制の高校に通いづらい生徒の受け皿となっているだけでなく、近年ではスポーツ選手や芸能人など、さまざまな活動と両立させたい生徒にも、自由に学べる場を提供してくれる高校として期待されています。
一方で、株式会社立ウィッツ青山学園高校(三重県伊賀市)が今年3月に閉鎖される(学校法人神村学園高等部通信制課程伊賀分校に移管)など、一部の学校には不適切な学校運営も指摘されています。どう考えればよいのでしょうか。

生徒数18万人、「広域」が多く

ウィッツ青山学園が高校等就学支援金を不正受給していたことが発覚したのを契機に、文部科学省は2016(平成28)年7月、広域通信制高校の在り方全体を考える調査研究協力者会議を発足させ、先頃「審議のまとめ」を義家弘介・文部科学副大臣(当時)に手渡しました。広域通信制とは、都道府県境を越えて生徒を募集する通信制高校のことです。

通信制高校は、1996(平成8)年度には公立68校(うち広域ゼロ)、私立28校(同8校)と公立が中心でしたが、2000(同12)年ごろから通信制高校生を支援する私塾の「サポート校」が人気を集め、03(同15)年度には構造改革特区で「学校設置会社」による学校設置事業(株式会社立学校制度)が制度化されたこともあって、06(同18)年度には公立75校(うち広域1校)、学校法人立97校(同47校)、株式会社立13校(すべて広域)と、私立(株式会社立を含む)が公立を上回りました。

しかし、一部の高校で、本来は別組織なはずのサポート校などと混然一体の教育を行っていたり、私学助成を制度上受けられない株式立が経営困難に陥ったりして、株式会社立から学校法人立に転換するなどの再編もありました。それでも2016(平成28)年度は公立77校(うち広域1校)、学校法人立148校(同85校)、株式会社立19校(すべて広域)と依然としてニーズは高く、しかも生徒数約18万人のうち広域通信制が約10万人と、狭域通信制(都道府県内で生徒を募集)の約8万人を上回っています。

生徒に求められる主体性

協力者会議は、まず、問題になっていた広域通信制について検討を進め、これを受けて文科省は問題のある学校を所轄する自治体を指導する一方、2016(平成28)年9月、所轄庁が学校を指導する際のガイドラインを策定しました。

一方、今回の「審議のまとめ」は、一部の問題ある広域通信制にとどまらず、通信制高校全体にも広げて、在り方を検討していることが特徴です。そもそも高校である以上、全日制や定時制と同様の高校教育が行われるべきことは、当然です。冒頭には、通信制高校で学ぶ生徒たちの声を取り上げ、多様な境遇にある生徒が熱心な指導の下で学んでいる意義を強調。生徒に将来の社会的・職業的自立に必要な力を身に付けさせることはもとより、次期学習指導要領の課題である「カリキュラム・マネジメント」や「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング=AL)の視点からの教育改革に積極的に取り組むよう求めています。

通信教材を通じて先生と<対話>し、課題をクリアして単位取得するには相当の主体性が必要ですが、主体性の育成は高校教育全体の課題でもあります。通信制を選択するには<覚悟>も必要な時代ですが、学校側の手厚いサポートと努力によって困難を乗り越えることで、社会に羽ばたける力を付けていってほしいものです。

※広域通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議(第9回) 配付資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/125/shiryo/1388757.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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