「100歳時代」の子どもに21世紀を生き抜く力を

子どもの教育を考える際、進学や就職を中心に考えるのは無理からぬところでしょう。
しかし、社会の先行きがますます不透明になるなか、どんな時代になっても元気に社会生活を送れる力を、学校時代に付けさせるという視点も、今や必要になっています。

女子は4人に1人が95歳まで

厚生労働省の2016(平成28)年簡易生命表によると、日本人の平均寿命は、過去最高の男性80.98歳、女性は87.14歳となりました。あくまで平均ですから、100歳を超えて生きる人はどんどん増えていくことは確実です。
2016(平成28)年に生まれた人が90歳まで生きる割合は、男性で25.6%、女性で49.9%。95歳までは各9.1%、25.2%です。もう女の子は、100歳まで生きても普通のことだと推計されているわけです。

簡易生命表では、各年齢の平均余命も算出しています。10歳の男性の平均余命は71.23年・女性77.39年・15歳は各66.26年・72.42年、20歳は各61.34年・67.46年といった具合です。子どもたちはもう、これだけ長い人生を送ることが確実視されています。21世紀いっぱいを担っていく世代だと言っても過言ではないでしょう。

保護者の方々の中には、会社に勤め始めた時、まだ定年が55歳だったというかたもいるかと思います。その後すぐ60歳になったものの、今や年金支給年齢との関係で65歳まで働くのは当たり前の時代です。子どもたちの時代になれば、70歳や75歳まで働く人も普通になってくることでしょう。それでもリタイア後の人生は、20年以上あるのです。

人生で大学に3回、働き方も選択

それだけの長い人生を送るには、健康の維持はもとより、時代の変化に対応して、働き方も変えなければなりません。それには、学校での学び直しも必要になります。

大学の将来構想を話し合う中央教育審議会の部会で、委員の吉見俊哉氏は、18歳・30代・60歳と、人生で3回、大学に入る仕組みを構築するよう提言しました。18歳は言うまでもありませんが、30代は、そのまま会社に勤めるにしても、新たな職種にチャレンジするにしても、職場では身に付けられない知識やスキルのブラッシュアップが不可欠だということです。さらに60歳は、定年退職して以降もまだまだ働くための勉強、あるいは趣味を極める勉強です。

既に中教審は、2016(平成28)年5月の答申で、「社会人の学び直し」を提唱しています。政府の働き方改革や、産業の生産力・競争力強化に呼応したものです。しかし既に人生で複数回、大学で学ぶ必要性が高まっているのに、25歳以上の学生の割合は、経済協力開発機構(OECD)平均が約18%なのに対して、日本は約2%にすぎません。まだまだ社会人が大学で学びにくいのが現状です。

人工知能(AI)など技術革新の影響で、小学生が社会に出るころには今ある仕事の半数ほどが入れ替わるという推計も、国内外で出されています。今や初めて就いた会社や職種を一生続けられるとは限りません。そのため次期学習指導要領でも、予測困難な時代を生き抜くための資質・能力を、学校時代に付けさせようとしています。

人は一生、学び続けるものです。一生学び続け、自らの判断で人生を切り開いていく資質・能力を身に付けることが今、求められているのです。

※2016年簡易生命表の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life16/dl/life16-15.pdf

※中教審答申「個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について」(2016年5月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/10/24/1371833_1_1_1.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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