学校の冷房化もよいけれど…エコも重要!

夏休みも真っ盛り。もはや学期中でも学校には冷房が欠かせなくなりつつありますが、もともと学校はエネルギー消費の少ない施設であり、さらに「エコ改修」も進められています。
折しも7月、九州北部を中心とした豪雨で大勢の住民が学校施設に避難し、改めて学校施設の重要性が認識されました。暑い季節だからこそ、学校のエネルギー環境について考えてみましょう。

改修後に3割減を実現した学校も

文部科学省と国土交通省は、2012(平成24)年5月に「学校ゼロエネルギー化に向けて」と題する検討委員会報告書をまとめ、エネルギー消費量を減らす「省エネ」と、太陽光発電などを利用した「創エネ」を組み合わせて、年間のエネルギー消費量を実質ゼロにすることを提言しています。それを受けて文科省では「スーパーエコスクール実証事業」を始め、モデル校として7校を選定し、うち4校が改修を済ませています。

このうち京都市立金閣小学校について、国立教育政策研究所は先頃、エネルギー使用実態を調べた報告書をまとめました。京都盆地といえば夏は暑いことで有名ですが、大文字山のふもと、金閣寺の南に位置する同小は、市内でも自然に恵まれた地域に位置しています。そこで、改修前の2012(平成24)年度と、改修後の16(同28)年度の測定結果を比べています。

具体的な改修内容は、太陽光発電設備や通風換気促進装置、水道直結型ドライミストを設置するとともに、トイレの照明はLEDに替え、屋上や外壁は断熱。窓にはひさし(ライトシェルフ)を設けるなどしました。

すると、電力は消費量が抑えられる一方、太陽光による年間の発電量は使用量を上回り、電気を買う量は改修前の約6割に抑えられました。冷房や暖房には都市ガスを使っていますが、エネルギー消費量の約2割にとどめています。全体として約3割の省エネを実現しました。それでも目標の約8割しか達成していないとして、今後、消灯を徹底するだけでなく、外気を遮断する区画ドアや間仕切りを設置するよう提言しています。

ライフライン遮断にも備えて

学校の立地にも左右されますので、すべての学校がゼロエネルギー化を目指すのは容易なことではありません。しかし可能な限り、夏は涼しく、冬は暖かい学校施設を目指す必要性が、近年ますますクローズアップされてきているように思えます。相次ぐ自然災害による、地域住民の避難施設としての機能を果たすためです。

学校ゼロエネルギー化を提言した報告書が出たのも、東日本大震災から1年余りの時でした。まだ雪のちらつく3月の発災で、寒さに震えながらの避難が続きました。先の豪雨災害でも、暑さで体調を崩す住民が続出しました。

大規模な自然災害では、しばしば電力を含むライフラインが遮断されます。そんな時に、避難場所となる学校施設が少しでも快適なものであれば、まさに地域住民の命綱となることでしょう。

地方自治体も財政難で、学校施設の耐震化がほとんど終わったあとは、老朽化を少しでも抑えるのに精いっぱいなのが、全国的な状況です。しかし日本中どこでも何らかの自然災害に遭う可能性からは逃れられないのですから、幅広い視点から学校施設の在り方を考えたいものです。普段は子どものためになるのですから、少しも無駄にはならないはずです。

※学校ゼロエネルギー化推進方策検討委員会報告書
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/020/toushin/1321261.htm

※学校施設のエネルギー使用実態等調査報告書
http://www.nier.go.jp/shisetsu/html/04.html

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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