中退の防止には高1の1学期の様子に注意!

高校中退を防止するためには、高1の1学期が最も大事な時期であることが国立教育政策研究所の調査結果でわかりました。高校に入学したばかりの1学期の時点で、高校生活や勉強に意欲や期待を持てるようにすることが中退防止に大きく役立つようです。
文部科学省によると、2015(平成27)年度の高校中退者は全国で約4万9,000人、中退率は1.4%(国立0.4%、公立1.3%、私立1.6%)で、ここ数年ほぼ横ばい傾向にあります。

半数が集中する時期に

調査は、ある県の2011(平成23)年度の公立高校入学者約1万3,000人を対象に卒業までの毎年4・7・11・2月(高3時は2月を除く)の計11回、高校生活や学習意欲などに関するアンケート調査を実施。質問に対する「よくあてはまる」「まったくあてはまらない」などの回答を点数化して、中退者と非中退者の意識や行動の違いなどを調べました。

それによると、中退者のほぼ半数が高1で学校を辞めていました。中退者と非中退者の回答状況を比較すると、高1段階で大きな違いが見られたのは、「まじめに授業を受けている」「授業がよくわかる」「学校行事に熱心に参加している」「部活動に熱心に参加している」「高校に行くのが楽しい」「高校生活に大きな期待がある」「充実した高校生活を送れそうだ」の7項目でした。特に高1の4月から7月にかけて回答得点が大きく減少しています。

また高2になると中退者と非中退者では、「好きな授業がある」「今の高校に入学してよかった」「身体がだるい」「気持ちがむしゃくしゃする」など新たに7項目で回答得点に大きな違いが出た他、高3では「今の自分が好きだ」「いらいらする」の2項目で新しく大きな違いが見られるようになります。高2以上になると、授業がわからないことなどによる学校生活への不満が「いらいら」や「むしゃくしゃ」といった形で心身の変調として現れてくるようです。

ただし両学年ともに高1とは異なり、特定の時期に得点が急減するようなことはありませんでした。このことから、中退者が集中的に発生し、回答得点が急減する高1の1学期が、高校中退防止の最重要ポイントとなる時期であるようです。

「わかる授業」で学習意欲向上を

保護者としては、中退の原因として子どもの人間関係のトラブルなどが気になるところですが、調査からは「よく話しかけてくれる友人がいる」「自分には『自分らしさ』というものがある」といった人間関係や自己肯定感に関する質問で、中退者と非中退者の間に大きな差は見られませんでした。逆に大きな差が見られたのは「まじめに授業を受けている」と「学校行事に熱心に参加している」の2項目でした。

あくまで一般論として言えば、やはり高校中退を防止するには、教員が「わかる授業」をする努力をして、どの生徒も授業を受けることが楽しいと感じられるようにすること、学校行事などで学校への帰属意識を高めることが効果的なようです。

また保護者は、特に高1の1学期における学習意欲の減退、高校生活への不適応といった子どもの変化に十分に注意を払うことが、中退だけでなく、問題行動全般を防止するうえでも大切なことだといえるでしょう。

※「高校中退調査 報告書」
http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/high-school_dropouts.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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