中退防止は中・小・幼から!?

高校中退は、不登校と並んで、生徒指導上の大きな課題となっています。
国立教育政策研究所は先頃、ある県の公立高校に入学した全生徒を対象に3年間実施した調査の結果を報告書にまとめました。中退した生徒と、在学を続けられた生徒との間には、どのような違いがあったのでしょうか。どうやら、高校教育だけの問題ではないようです。

必要な「高1ギャップ」への対応

調査した県は、中退率が47都道府県中、ほぼ真ん中ぐらいだといいます。2011(平成23)年度の入学直後から3年生になった13(同25)年度の11月まで、全11回にわたる質問紙調査を実施しました。

すると、1年生の中退者には、4月から7月にかけて、質問35項目中7項目で大幅な落ち込みがありました。たとえば「高校に行くのが楽しい」の平均値(4点満点)は、中退者で4月の3.10点から2.53点と0.57ポイント下がっており、非中退者の0.14ポイント減(3.30点→3.16点)と大きな差を見せています。

中学校では、小学校とは全然違った学習・生活環境になじめない「中1ギャップ」が問題になっていますが、高校でも、「高1ギャップ」として対応する必要がありそうです。

3年間の調査を分析して、報告書では、▽小・中学校も含めて、主体的に日々の授業や学校行事に取り組むよう指導することが、結果的に高校中退の防止に結び付く可能性が高い▽「わかる喜び」を実感させることが、高1段階での中退に歯止めを掛けている可能性が高い▽家族と会話ができる環境にある生徒ほど、2年生や3年生での中退に歯止めを掛けている可能性が高い……としたうえで、「このことは、これまでに、高校中退を防止する要因として指摘をされてこなかった」としています。

学校段階をとおした教育の重要性

高校の入学者選抜は、依然としてペーパーテストなどの点数で振り分けられることが中心で、高校選びに関しても、偏差値などの難易度で「入れる学校」を絞るのが今も一般的なのが実情でしょう。

しかし、小・中・高校を通じて育まれる「学力」は、知識・技能はもとより、思考力・判断力・表現力、学習意欲という幅広い「学力の3要素」を兼ね備えたものであるべきことが、学校教育法で定められています(30条2項)。次期学習指導要領等では、これを「資質・能力の三つの柱」(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等)としてパワーアップさせるとともに、幼稚園から高校までをとおして段階的に、かつ教科横断的に育んでいくことを求めています。

現在でも、学習面はもとより生活面も含め、一人ひとりの実態に応じた丁寧な指導が、中退を防止する手立てであることは言うまでもありません。しかし、高校に入ってから対策を打てばよいと考えていてもいけないでしょう。入学前から、勉強や学校生活に対する意欲を育んでおくことや、学習・生活習慣を身に付けさせておくことも重要です。そうした意味で、中退対策は入学前から始まっていることを、改めて報告書は教えてくれていると受け止めるべきなのかもしれません。

※高校中退調査報告書
http://www.nier.go.jp/03_laboratory/pdf/press_20170607.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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