AO・推薦、2020年度から衣替え

「高大接続改革」に基づいて、大学入試が2020(平成32)年度(今の中学3年生が受験)から大幅に変わります。象徴的なのは大学入試センター試験が「大学入学共通テスト(仮称)」に変わることですが、個別大学の入学者選抜も大きく変わることを見逃してはいけません。
その代表が、AO入試と推薦入試の衣替えです。現状はどうなっていて、今後どう変わるのでしょうか。

私立では入学生の半数を超える

「AO入試」の正式名称は、アドミッション・オフィス入試。
2017(平成29)年度大学入学者選抜実施要項によると、「詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって、入学志願者の能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に判定する入試方法」のことです。
現在、(1)入学志願者自らの意志で出願できる公募制とする(2)知識・技能の修得状況に過度に重点を置いた選抜基準とせず、入学志願者の能力・適性・意欲・関心等を多面的・総合的に判定する(3)各大学が実施する検査(筆記・実技・口頭試問等)、センター試験、資格・検定試験等、高校の教科の評定平均値のうち、少なくとも一つを合否判定等に用いる……とされています。

一方、推薦入試は、「出身高等学校長の推薦に基づき、原則として学力検査を免除し、調査書を主な資料として判定する入試方法」です。それだけで判定が難しい場合は、各大学の検査、センター試験、資格・検定試験の成績等も使ってよいことになっています。

2016(平成28)年度の実施状況を見ると、AOによる入学者の割合は8.9%(国立2.8%、公立2.2%、私立10.6%)、推薦は34.8%(各12.1%、24.4%、40.1%)。両者を合わせると、前年度比0.2ポイント増の43.7%(各0.1ポイント増の14.9%、0.4ポイント増の26.6%、0.1ポイント増の50.7%)と、年々じわじわと増えています。特に私立では、半数を超えています。

重要なのは「学力の3要素」の総合評価

AOにしても推薦にしても、本来は書類等に基づいて、その大学の教育を受けるにふさわしい入学者選抜が行われているはずです。しかし、学力検査を行わないことが、私立大学を中心に「一部、事実上の『学力不問』となっている場合があると指摘されている」ことから、近く正式に発表される2021(平成33)年度大学入学者選抜の実施要項の予告では、AO入試を「総合型選抜」、推薦入試を「学校推薦型選抜」(いずれも仮称)と名称を改め、実施時期とともに、内容も見直すことにしました。

具体的には、「知識・技能の修得状況に過度に重点を置いた選抜基準とせず」(AO)、「原則として学力検査を免除」(推薦)という記述を削除。各大学が実施する評価方法(小論文等、プレゼンテーション、口頭試問、実技、教科・科目のテスト、資格・検定試験等の成績など)か、大学入学共通テストの少なくともいずれか一つを必須にするとしています。

一部では「学力テストを必須化」と報道されましたが、必ずしもペーパーテストが課されるとは限りません。そのため時期の変更などを除くと、形態は今とそう変わらないかもしれません。

無視してはならないのは、本来の趣旨である「学力の3要素」(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性)の多面的・総合的な評価を、きちんと行わなければならないとされていることです。受験生の側も、一般入試が嫌だからAO・推薦に……という安易な姿勢は、もう許されないでしょう。

※2016年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/06/1386387.htm

※高大接続改革の進捗状況について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/05/1385793.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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