小学校英語を「総合」で!? どう考えればよい…?

2020(平成32)年度から全面実施となる小学校の次期学習指導要領では、英語の時間が3年生以上で年間35時間(週1コマ分)増えます。
これに関して文部科学省は、全面実施前の2018~19(平成30~31)年度を「移行措置」として年間15時間分の増加を前倒しで求め、その分は総合的な学習の時間を充ててもよいという案を示し、6月25日まで一般の意見を聴くパブリックコメント(意見公募手続)に掛けました。こうした措置を、どう考えればよいのでしょうか。

年間35時間増の「移行措置」で15時間増

次期指導要領では、小学校高学年で行っている「外国語活動」を教科「外国語」に格上げするとともに、外国語活動は中学年から始めることにしました。グローバル化が急速に進展する社会に出ていく子どもたちにとって、外国語によるコミュニケーション能力を身に付けることがますます必要になっており、そのためには発達段階に応じて、外国語活動の「聞く」「話す」の2技能を早期に実施して英語に慣れ親しませるとともに、小学校のうちから教科として「読む」「書く」を加えた4技能を実施しよう……ということになりました。

2技能が4技能に増えれば、それだけ授業時間数も必要になります。次期指導要領では、高学年で、倍増の年間70時間を標準時数としました。また、中学年は新たに年間35時間を実施する必要が出てきます。

しかし今回の改訂では、他の教科などの授業時数を削らない方針を取ったため、外国語の増加によって、総授業時数が純増することになります。一方で授業のコマ数を増やしたくても、現在の週28コマが「限度」(2008<平成20>年1月の中央教育審議会答申)です。そこで、次期指導要領では、15分の短時間授業を組み合わせたり、土曜日や長期休業中に集中的に授業を行ったりするなど、各学校の工夫で何とか増加分を生み出すよう求めることにしました。

あくまで<緊急避難措置>

そうは言っても、学校は先生方が多忙化しており、すぐに工夫ができる状況にはありません。そこで、まずは各学年15時間分の増加から始めてもらうことにしました。外国語活動として、中学年は年間15時間、高学年は50時間(35時間+15時間)の実施を求めます。そして、移行措置期間中に限り、総合学習の時間を15時間まで使ってよいことにしたのです。

注意したいのは、これが移行措置期間中に限られた、言わば<緊急避難措置>であることです。総合学習の年間時数をめぐっては、前回の改訂(現行指導要領)で、小学校が105~110時間から70時間に、中学校が70~130時間から50~70時間に、それぞれ削減されたため、当初、「総合学習は縮小された」という誤解が広がりました。実際には各教科の授業で「言語活動」が導入されており、むしろ総合で行っていた学習が全教科に拡大された……というのが実情でした。

今回の改訂でも、幅広い資質・能力を育成するために、総合学習の役割がますます期待されています。移行措置でも、決して総合学習を軽視することなく、学校全体でバランスの取れた教育活動を行うことが求められます。もちろん、それには各学校に対する国や自治体の手厚い支援も欠かせないでしょう。

※学校学習指導要領,中学校学習指導要領の改訂に伴う移行措置案に対する意見公募手続(パブリック・コメント)の実施について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/05/1386249.htm

※幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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