自由研究 かつては教科、今後は入試でも注目!?

少し気が早いですが、夏休みまであと1か月。自由研究に何をやるか、頭を悩ませるお子さんもいらっしゃるかもしれません。自分の決めたテーマにじっくり取り組む自発的な学習が、普段の勉強の意欲をかき立ててくれるだけでなく、いずれ大学入試にも役に立つかもしれない……と言ったら、言いすぎでしょうか。

自発的な学習を誘導

昔、自由研究が「教科」だったのをご存じですか?といっても、戦後すぐの話です。学習指導要領は当時「試案」でしたが、社会科とともに「自由研究」が創設され、小学校は4~6年生で年間70~140時間(週2~4コマ)の必修、中学校は「外国語」「習字」「職業」とともに年間35~140時間(週1~4コマ)の選択科目とされていたのです。

この指導要領では、新しい時代の教育をつくるに当たって、教科の学習も「児童の自発的な活動を誘って」学習を進めるよう求めていました。そうすると、「児童の個性によっては、その活動が次の活動を生んで」いくことが考えられます。帰宅後や放課後に一人でやるのもよいけれど、教師の指導があったほうが、学習を深く進められる……そんな思いから、特別な時間を置くことになったのです。

ただ、当時は「クラブ組織」で実施したり、「当番の仕事」「学級の委員としての仕事」に充てたりするのも「用い方の一つ」とされていました。

それが1951(昭和26)年の改訂版では、自由研究がなくなりました。自由な学習が他の教科の時間内に行われるようになったこと、この時間の中で行われていた児童会や学級会、クラブ活動などは教育的に意義があるので独立させたほうがよいことを、理由に挙げています。
現在の自由研究は、そんな時代のなごりです。

新科目や出願書類にも役立つ

ところで小学5年生より下の学年では、教育も大学入試も、大きく変わります。大学入試センター試験が「大学入学共通テスト(仮称)」に代わるなど大きな制度改革があるのは、今の中学3年生が受験する2020(平成32)年度以降ですが、高校の次期指導要領(来年3月に告示予定)が全面実施となるのは、22(同34)年度の高校入学生、つまり現在の小5からです。

大学入試改革を含めた「高大接続改革」は、もともと2段階で進めることが決まっています。2022(平成34)年度入学生が3年生になって受ける24(同36)年度の共通テストでは、出題科目を簡素化するとともに、次期指導要領で設けられる地理歴史科・公民科の「歴史総合」「地理総合」「公共」や、数学と理科にまたがる選択科目「理数探究」も出題することにしています。

さらに個別大学の入学者選抜でも、「総合型選抜」(仮称、従来のAO入試)や「学校推薦型選抜」(同推薦入試)で小論文等やプレゼンテーション、口頭試問、実技などを課す他、「一般選抜」(同一般入試)でも、調査書はもとより、総合的な学習の時間や校内外で取り組んだ活動の報告書や、入学後の「学修計画書」など、提出書類を充実することにしています。学力のもう一つの要素である「主体性・多様性・協働性」を評価するためです。

これからは主体性や探究心が、入試でも積極的に評価される時代になってきます。そんななか、自由研究で育まれるチカラが、中学校や高校での学習を通じて、大学受験にも大きく役立っていくことは、間違いありません。

※1947年度 学習指導要領 一般編(試案)
http://www.nier.go.jp/guideline/s22ej/chap3.htm

※高大接続システム改革会議「最終報告」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/toushin/1369233.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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