グローバル人材、どう育てる? 東京都は12年一貫校

現代の社会は、国境を越えて人が行き来したり、海外と取り引きしたりすることが当たり前になっています。「グローバル化への対応」は、もはや一部の限られた人たちの課題ではありません。これから社会に出ていこうという子どもたちに、どのような教育が必要なのでしょうか。

論理的思考力や課題解決力も育成

東京都教育委員会は、小中高の12年間の教育を一貫で行う都立学校を、2022(平成34)年度に開校することにしています。具体的には、都立立川国際中等教育学校(各学年160人、中学1年生に当たる7年生で80人程度を募集)に、附属小学校(同80人)を設置します。

教育理念は、「次代を担う児童・生徒一人一人の資質や能力を最大限に伸長させるとともに、豊かな国際感覚を養い、世界で活躍し貢献できる人間を育成する」としています。生徒の将来の姿も、「高い言語能力を活用して、世界の様々な人々と協働するとともに、論理的な思考力を用いて、諸課題を解決し、様々な分野で活躍する人材」と置きました。小学校から第2外国語に触れたり、他教科の授業を英語で行ったりするのも目を引きます。

ただ、「高い言語能力」ばかりでなく「論理的な思考力」「諸課題を解決」という部分にも注目したいと思います。外国語がペラペラでも、中身がなければ、世界では相手にされません。論理的思考力や課題解決能力を身に付けたうえで、手段としての外国語を使い、異質な文化を持った世界中の人々と協働していく。そんな姿を求めているのです。

教育方針を見ても、「世界で通用する語学力を育み、それを支える言語能力を向上させる」のはもちろん、▽自ら課題を認識し、論理的に考え、判断し、行動できる力を育てる▽日本の伝統・文化を理解し尊重するとともに、多様な価値観を受容し、主体的に国際社会に参画する力を育てる▽異学年との学習活動や地域連携、国際交流を通じて、他者を思いやり、協働して新しい価値を創造する力を育てる……としています。そうした全人的な教育を、12年間のさまざまな教育を通じて行おうとしているのです。

多様性を理解し、協働できる力も必要

東京五輪・パラリンピックが行われる2020(平成32)年度から小学校で実施される次期学習指導要領でも、グローバル化への対応が課題の一つになっています。都立小中高一貫教育校のような、特別な学校に限りません。一般の小中高それぞれに求められていることであり、その基礎を培うのが幼児期の教育……という位置付けです。

その考え方は、2016(平成28)年12月の中央教育審議会答申に端的に表されています。そこでは、「グローバル化する中で世界と向き合うことが求められている我が国においては、自国や他国の言語や文化を理解し、日本人としての美徳やよさを生かしグローバルな視野で活躍するために必要な資質・能力の育成が求められている」としたうえで、外国語はもとより、古典を含めた国語や歴史、芸術の学習を通じて、「文化や考え方の多様性を理解し、多様な人々と協働していくことができるようにすること」が必要だとしています。

コミュニケーションの手段としての英語は重要です。しかし、英語「だけ」ではいけません。時には英語の通じない人とも積極的に交流し、一緒に仕事をしていく姿勢が、これからの子どもたちには、大なり小なり必要になってくるのです。

※都立小中高一貫教育校教育内容等検討委員会報告書
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2017/pr170427a.html

※中教審答申(2016年12月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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