小学校は英語力重視で教員を採用

文部科学省は、2017(平成29)年度公立学校教員採用選考試験の実施方法をまとめました。小学校では、次期学習指導要領で英語が教科化されることを視野に入れて、中学校や高校の英語教員免許を持つ受験者や、英語力検定・能力試験で一定の成績やレベルに達している受験者などに対して、試験の成績を加点したり、特別枠を設けたりするなどの優遇措置を取る教育委員会が増えています。

大学の養成課程では英語指導を教えず

調査では、2016(平成28)年度中に行われた47都道府県教委・20政令指定都市教委と、大阪府から教員人事権を移譲された豊能地区教委(豊中市・池田市・箕面市・豊能町・能勢町)の合計68教委の採用試験の実施方法を調べました。

2020(平成32)年度から全面実施される小学校の次期学習指導要領では、高学年で英語が教科になる他、現在は高学年で実施されている「外国語活動」が3・4年生に前倒しされることになっています。ここで問題となるのが、小学校教員の英語力です。大学の小学校教員養成課程では英語を学ばないため、多くの小学校教員が英語の指導に自信がないというのが実情です。

このため各教委は、現職小学校教員の英語力向上に向けた研修などを進めていますが、同時に教員採用試験でも、英語力のある人材を小学校教員として採用しようとしているようです。

53教委が資格者に優遇措置

受験者全員に課される筆記試験において、小学校の外国語活動に関する問題を出題しているのは53教委(前年度52教委)に上っており、小学校の実技試験に英会話などを実施しているのは24教委(同23教委)となっています。もはや小学校教員の採用試験でも、英語は関係ないとは言えなくなっているようです。

注目されるのが、英語力のある人材を小学校教員として採用しようという動きです。英検1級保有者などに対して一部の試験を免除しているのは20教委(同19教委)、特別枠を設けているのは15教委(同17教委)となっている他、一定の資格者に筆記試験などの点数を加点するなどの優遇措置を実施しているのは30教委で、前年度の16教委から約2倍に増えました。英語能力のある受験者に優遇措置を講じている教委は、68教委のうち53教委(同46教委)にも上っています。

具体的な内容を見ると、広島県・広島市では、英検準1級以上などの受験者に300点満点中20点を加点することにしています。新潟県では、中学校や高校の英語教員免許を持つ小学校教員採用試験受験者に対して10点を加点する他、英検2級以上などに5点を加点しています。大阪市は小学校採用試験で、中学校や高校の英語教員免許所有者に30~60点を加点する他、英検1級・準1級・2級の保有資格ごとに加点することにしています。
中学校と高校の採用でも、神奈川県が英検1級やTOEIC 900点以上の者に特別選考枠を設ける他、新潟県や長野県なども英検1級やTOEIC 900点以上などで、一次試験を免除するなどの優遇措置を導入しています。小学校だけでなく、中学校や高校の英語教員にも「使える英語」が求められているようです。

※平成29年度公立学校教員採用選考試験の実施方法について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1381768.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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