第9回:「考える力」はどうはかる? 新時代の子どもたちの評価

2020年には新しい制度のもとでの大学入試がスタートし、その1年後には中学校の新しい学習指導要領が全面実施となります。教育制度や学習内容が大きく変化していくなかで、中学校での子どもたちの評価はどう変わっていくのでしょうか。今後の教育改革をふまえた評価の変化について、ベネッセ教育研究所副所長の小泉和義がお話しいたします。

Q.今度の大学入試改革や次期学習指導要領は、今の中学生にとって学校での評価に影響がありますか?

A.今後は「見えにくい力」も評価する方向に進んでいきます。

中学校では、これまで知識や技能など「見える力」を中心に評価してきました。しかし、新しい学習指導要領改訂では、「見えにくい力」にも重点を置いて評価していくことになります。今の中学生は2021年にはすでに中学校を卒業しているので、関係ないと思われるかもしれません。しかし、「見えにくい力」の育成を重視し、その力をしっかり評価していこうとする動きはすでに始まっており、今の中学生にも、十分関係することなのです。
「見えにくい力」にはさまざまなものがありますが、文部科学省が重視しているのは思考力・判断力・表現力といった「考える力」です。自分で考える力がこれからの時代に必要であり、社会で生きていく力になると捉えており、この力をつけるための教育を小学校から大学まで一貫して行っていくというのが今度の教育改革の核となる考えです。

Q.目に見えない力を評価するのは難しそうですが…。

A.子どものアウトプットを客観的に評価するしくみが必要です。

「考える力」のように、見えにくい力を客観的に評価することは中学校にとって大きな課題です。人が今、何をどのように考えているのか、頭の中をのぞくことはできないので、考えた結果としてのアウトプットを評価することになります。ただ、本当に子どもが考えたのかどうかまで判断するのは難しく、仮に丸暗記したものを書いたり発表したりしたとしてもオリジナルの考えなのかどうか見分けがつかないかもしれません。

実は、現行の学習指導要領でも中学校の成績を「関心・意欲・態度」「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」の4つの観点で評価しており、この中の「思考・判断・表現」が「考える力」の項目にあたります。この項目はペーパーテストでははかりづらく、どうしても主観的な評価になってしまいがちです。
そのため、学校現場では「考える力」を評価する方向に進みながらも、「考える力」を共通言語で語れる尺度をどのように作り、客観的に評価することができるのか、今も試行錯誤を続けています。

Q.「考える力」を客観的に評価するにはどんな方法があるのでしょうか?

A.例えば作文の内容を思考の種類で分類し、評価する試みが進んでいます。

九州のある大学附属中学校では、パフォーマンス評価の手法を取り入れて「考える力」を評価する試みをしています。パフォーマンス評価とは、ペーパーテストだけでははかりにくい力をプレゼンテーションや作品、作文などで多面的に評価するというもの。この中学校では、例えば子どもの作文や発表内容が、どういう思考の型を使って表現したのかを分析します。具体的には、「比較する」、「分類する」、「関連づける」、「類推する」など10種類に分けた思考の型を共通言語に使い、先生が「ここは比較の視点で考えているな」「ここは抽象的な内容を具体化しているな」など分析して、思考力を評価します。この取組みは、先生だけが行うのではなく、子どもも自分自身で、どの思考の型を使ったのかを自己評価しています。ただ、これをひとりひとり行うには相当な時間がかかりますし、先生のスキルや経験も必要なため、一般の学校ですべての先生が行うには、少し時間が必要かもしれません。

Q.「考える力」を客観的に評価できるようになるのは、まだまだ先のようですね。それでは、今はあまり意識しなくてもいいのでしょうか?

A.これからの時代に必要不可欠な力なので、評価に関わらず力をつけて。

「考える力」が大学入試や学校でも客観的に評価されるようになるにはもう少し時間がかかるのは事実ですが、その力を教育現場で育成し始めていることもまた事実です。
ですから、学校で考える力がどう評価されるかに関わらず、考える力を身につけていくこと自体は必要です。

今までの時代はひとつの正解に向かって、最短距離、最短時間でたどり着くことがゴールでした。しかしこれからの時代は、将来の予測が困難な複雑で変化の激しい社会になると考えられており、正解が複数ある、あるいは正解がないことも考えられます。
つまり、これまでのように解決のパターンだけ覚えていても通用しない時代になれば、試行錯誤しながら自分なりの答えを見つけていかなければなりません。そのとき、思考のプロセスを知らないと何もできないことになってしまいます。だからこそ、「考える力」が必要なのです。また、これまでは誰かが「課題」を用意してくれて、それを解決するという前提での話でしたが、これからは、課題そのものを探すところから必要になることも考えられ、そういう意味でも「考える力」が重要になります。

中学校でも、今後はいっそう「考える力」をつけるための授業が増え、それを正当に評価するための取り組みが行われていくでしょう。保護者はその取り組みをしっかり見守っていく必要があります。そして、面談などで先生と話をする機会があれば、我が子の「考える力」について意見を交わし、お子さんの未来につながる力の育成に役立ててもらえたらと思います。

最終回では、「考える力」など未来を生きる子どもたちに必要な力をつけるために、ご家庭でできることについてお話しいたします。
(取材日:2017年3月29日)

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プロフィール

小泉和義(こいずみ・かずよし)ベネッセ教育総合研究所 副所長

小泉和義(こいずみ・かずよし)ベネッセ教育総合研究所 副所長

福武書店(現ベネッセコーポレーション)入社後、高校の進研模試営業を担当した後、研究部門に異動。教育分野に関する調査研究、サイバー子ども学研究所のチャイルドリサーチネット(CRN)の運営に関わる。その後、学校向け情報誌進研ニュース(VIEW21の前身)中学版の編集担当、VIEW21(小学版、中学版、高校版)副編集長、VIEW21(小学版、中学版、高校版)編集長、情報編集室長を歴任し、現在に至る。小、中
高校現場の教育課題に詳しい。任意団体 次世代の教育を考える会 幹事。

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