高学年の子供を算数好きにするためには?

小学校高学年になると、算数が苦手だと感じている子供が増えてくるようです。そうした子供にも算数がおもしろいと思ってもらうには、どうしたらよいでしょうか。ベネッセコーポレーションの教育総合研究所顧問を務める八木義弘先生にお話を伺いました。

自力解決する力を身につけさせて

長年、私は小学生に算数を教えていましたが、授業をしていて子供たちがいちばん喜ぶのは「自力で問題解決できたとき」です。特に低学年の頃は、計算問題がすらすら解けるのでそうした経験がたくさんできるため、「算数が好き」と答える子が多いのではないでしょうか。ただ、学年が上がり難しい問題や抽象度の高い内容に出あい、一度つまずいてしまうと、系統性の強い算数・数学ではそれ以降がわからなくなり、苦手意識をもってしまう子が増えていくのです。

苦手意識をもちはじめた子供に算数を好きになってもらうには、①「自分で問題が解けた!」という喜びや、本当に「わかった」「できた」「考えた」をもう一度味わい、やる気をおこさせることが、いちばんの近道だと考えています。そのために、算数は、理科や社会に比べ、1時間ごとの授業で問題解決を行う教科のため、たくさんの成功体験を得られやすい教科なのです。②生活場面と結びつけて、多くの体験をしながら学ぶことです。「解けた!」という喜びをもう一度経験し、自信を取り戻せるよう保護者のかたには既習の内容を教科書で振り返るなど、サポートしていただきたいですね。

自分で試行錯誤できる力を育てる

自力解決する力を育てるために大切なのは、算数の問題にしっかりと向き合い課題を把握し、解決の方法の見通しが立てられるようになることです。問題解決のプロセスには、下記の5つのステップがあります。

【1】課題把握
【2】解決の見通し
【3】自力解決
【4】検討
【5】まとめ

なかでも算数で大事なのは、【2】の解決の見通しを立てる力をつけることです。問題を解くことが苦手な子は、課題把握では、課題を正しく読み取らなかったり、どのように解決すればよいか、既習の学習を思い出して「解決の見通し」を考えずに立式したりして、誤るのです。一方、算数の得意な子は、問題を読んだら、これまでに学んだことを応用したり、図で考えれば解けるだろうと見通しを立てる力をもっているのです。

例えば、台形の面積の求め方を考えようという授業では、既に面積の求め方を学習した三角形や平行四辺形、長方形に分割したり変形したり、いろいろ工夫して求めさせます。

台形の公式を知らなくても、

1)分割してたす考え方
2)長方形や平行四辺形に形を変形する考え方
3)大三角形をつくり、面積を求めたあと、追加した小三角形をひく
4)面積を2倍にした平行四辺形にする考え方

といった方法で面積を求められます。他にもたくさん方法はあります。こうしたアイデアが思い浮かべられるようになるには、4年で学習した複合図形の面積(L字型)やパズルでたくさん遊んだ図形感覚が役に立つのです。

このように算数では、生活や遊びの中で体験したことを土台にすると、理解しやすくなることがたくさんあります。例えば、時間・速さの問題では、公式を覚えればいいと思うかもしれませんが、一定の道のりを自転車で走ったらどれくらい時間がかかるか、実際に測って速さを求めてみることで、(道のり)÷(時間)=(速さ)の公式の真の理解につながり、身につき活用する力となり、忘れないのです。

また、比を学ぶときにも、そうめんを食べるときにめんつゆを水で薄めた経験のある子は、表示されている比率で作れば、分量が違っても混合の比が同じなら、味は同じになることを知っています。ですから、めんつゆと水の比が1:3なら、めんつゆを150ml使うとき、水は何ml必要かという問題があったとしても、すんなり3倍の式を立てられるのです。

このように机に向かってじっと取り組むだけでなく、生活の中で経験したことが学校で学習することと結びつき、知識や技能が身につき、実際の算数の問題を解くのにも役立つんだとわかると、子供たちはますます算数が好きになり、自ら学ぶ力を高めていきます。ぜひ、高学年の子供であっても、生活と学校での学習をいききさせ、生活の中で具体的に算数が役に立つことを子供たちに実感させてあげてほしいと思います。きっと算数が楽しく感じられ、学校での授業にも意欲的に取り組めるようになるはずです。

つまずきは教科書に戻って復習を

もし、上記の【2】の解決の見通しの段階でつまずいているならば、既習の学習内容を共に思い出すため、教科書に戻ることをおすすめします。教科書はこれまで習った事項を踏まえて、丁寧に解説してあるので、子供がどこでつまずいているか把握するのにも適しています。正しい式が立てられるようになったら、あとは、類題を解いて、知識・技能をしっかりと定着させましょう。その際、「すごいね! どうしてこの式を書いたの」とその理由を聞いてください。根拠をもって説明する論理的な考え方が育成されていきます。誤った場合でも、ミスを責めるのではなく、どうすれば正解にたどりつけるかを一緒に考えてあげるよう心がけてほしいですね。

学習したことをしっかりと定着させるには、その単元のときだけ学習するのではなく、学習して何週間かたってから、もう一度見直すという長期的な復習が大切です。また、机に向かうばかりでは嫌になってしまいますから、例えば割合が苦手なら「今日は冷凍食品が4割引きだって。480円の4割引きはいくら?」などとともに学び合い、生活の中で楽しく復習を取り入れてほしいと思います。

ちょっとした工夫で、日常生活の中に算数の興味を広げ、復習ができるものはたくさんあります。子供と楽しみながらゲーム感覚で学んでほしいですね。

プロフィール

八木義弘

公立小学校校長、東京都算数教育研究会会長などを経て、現在は株式会社ベネッセコーポレーションの「ベネッセ教育総合研究所」顧問を務める。

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