これからの工学部には情報系が不可欠

多くの私立大学や国公立大学前期の入試も終わり、受験生にとっては徐々に進学先が決まっていることでしょう。学部選びの際には、就職に有利かどうかも気になるところです。とりわけ工学部は、団塊世代の大量退職から続く人手不足も反映して、2007(平成19)年度以降は志願者も増加傾向にあります。そんな工学部の教育を、見直そうという動きがあるというのですが……。

共通教育に位置付けへ

文部科学省は今年に入って、工学系教育の在り方に関する検討委員会を発足させました。6月の中間まとめを目指して、急ピッチで検討を進めるといいます。

検討委の設置趣旨では、工学系教育が、人工知能(AI)やビッグデータ、IoT(モノのインターネット)などにより「第4次産業革命」「超スマート社会」を担う人材育成の必要性が強調されています。文科省系有識者会議のトップといえば大学教授を充てるのが通例ですが、ここでは小野寺正・KDDI会長を座長に据えているのも、その表れといえるでしょう。

たとえ文系であっても、これから社会で仕事をするにはICT(情報通信技術)の素養は不可欠です。工学部は、まさにその最前線の教育を担うことが期待されます。しかも、情報系の学科・専攻に限らず、工学倫理などとともに、工学部教育全体の「横串」として共通する基盤として教育に力を入れようというのです。

第4次産業革命は、政府の成長戦略にも位置付けられています。今回の検討は、そうした成長分野を担う人材育成の強化策としても期待されます。

高校以下でも活用能力育成に力

こうした動きを紹介しても、「工学部志望でないから関係ない」、あるいは「大学に入ってから勉強すればよい話だ」と思うでしょう。しかしAIやIoTは将来、すべての人々の生活に大きく関わってくるものです。とりわけAIの進化によって、今の小学生が社会に出るころには仕事の半分が入れ替わっているだろう……という予測が、国内外から出されているところです。

2030年ごろまでの実施を想定する小中学校の次期学習指導要領は、3月中に告示される予定ですが、改訂を提言した昨年末の中央教育審議会答申でも、第4次産業革命に対応する必要性が強調されています。近未来の社会で、AIに使われるのではなく、AIを使いこなす人間になることが、次期指導要領の究極の目標といえるかもしれません。

小学校でプログラミング教育が必修化されるのも、その一環です。さらに高校(指導要領の告示は2018<平成30>年3月の予定)では、教科「情報」で、これまで選択必履修としてきた在り方を見直し、「情報I」に一本化します。情報活用能力に関しては、どの児童生徒も共通に学ぶべき資質・能力がある……との考えからです。

工学部志望者でも、工業高校生などを除けば、情報科目で受験することはほとんどないでしょう。だからといって、高校までの情報の勉強を軽視はできません。工学部志望ならなおさら、情報科目を一生懸命勉強しないと、大学に進んでから大変になるかもしれないのです。

※大学における工学系教育の在り方に関する検討委員会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/081/index.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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