心配な先生の「心の健康」 精神疾患で休職、5,000人超が続く

学校はこれから年度末に向けて、一年で最も忙しいシーズンを迎えます。ただでさえ教員の多忙化が指摘されるなか、くれぐれもメンタルヘルス(心の健康)には留意してほしいものです。先生方のメンタルヘルスの現状は、どうなっているのでしょうか。

減ったとはいえ184人に1人の割合

教員のメンタルヘルスについて実態の一端を示すのが、病気休職者のうち精神疾患を理由とする者の推移です。文部科学省は毎年、公立学校教職員の人事行政について調査していますが、2015(平成27)年度の精神疾患による病気休職者は全国で5,009人となっており、3年連続で5,000人を超えました。在職者数に占める割合は0.54%で、184人に1人が精神疾患で休職している計算になります。ピークだった2009(平成21)年度(休職者数5,458人、割合0.6%=168人に1人)に比べれば低く、この3年間にしても微減が続いていますから、悪化しているとは言えないのですが、依然として深刻な課題であることは間違いありません。

割合を学校種別で比べれば、小学校が0.55%、中学校が0.64%、高校が0.37%、特別支援学校が0.66%など、義務教育段階、とりわけ中学校で多いのが気になります。日本の中学校教員は<世界一忙しい>ことが、経済協力開発機構(OECD)の調査でも明らかになっているところです(2013<平成25>年「国際教員指導環境調査」=TALIS)。

職種別では、校長が0.07%、教頭を含む「副校長等」が0.23%と管理職では低いのに対して、学級・教科担任など一般の「教諭等」は0.60%と高くなっています。

年代別では、20代が0.50%だったのに対して、30代以降では0.61~0.63%と増加します。休職者に占める割合を計算すると、20代が11.3%、30代が22.3%、40代が27.8%、50代以上が38.7%と、50代以上が突出しているように見えますが、そもそもの年齢構成(20代13.6%、30代21.5%、40代26.7%、50代38.2%=2013<平成25>年度学校教員統計調査)と比べれば、むしろ30・40代に多いことがうかがえます。この世代は採用数が抑制された影響から、極端に層が薄いうえに、学校の中堅として多くの仕事が期待されていますから、それだけストレスも高まっているようです。

対策は次々と打ち出されても…

注意したいのは、精神疾患を理由にした休職者というのは「氷山の一角」であるということです。その背後に、病気休職一歩手前の「予備軍」が相当数いることは確実です。また、精神疾患以外を理由にした病気休職者の中にも、実はストレスによる体の不調が含まれている可能性も捨て切れません。

産休などと違って、病気休職には、国からの代替補充がありません。学校に迷惑は掛けられないからと、無理をして出勤しているケースも少なくないと見られます。そうなると、ますます心を病むばかりか、子どもの指導にも悪影響をもたらしかねません。

文科省が教職員のメンタルヘルス対策を打ち出したのは、2013(平成25)年3月。その後も多忙化解消のために、「チーム学校」の提唱(2015<平成27>年12月の中央教育審議会答申)、業務適正化の提言(16<同28>年6月)などを行い、松野博一・文部科学相は今年初めに改めて業務適正化のメッセージを発表しています。しかし、教育現場の努力にも限界があります。先生の数を大幅に増やすか、業務を抜本的に見直すかしなければ、学校は持たなくなるかもしれません。

※公立学校教職員の人事行政状況調査(2015年度)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1380718.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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