東大が女子学生に「住まい支援」の深いワケ

大学入試センター試験が、いよいよ14・15の両日に行われます。
国立大学志願者には、その結果を見て出願校を最終決定するという人も少なくないでしょう。成績はもちろんですが、学生生活を送る環境も、重要な選択要件です。これに関して昨年、東京大学が女子学生向けに「住まい支援」を行うと発表したことが、ちょっとした話題になりました。ネット上の反応を見ると、「なぜ女子だけ?」という疑問も多かったようですが、なぜ東大が女子限定の支援を行うのでしょうか。

世界と競争するには学生の多様性が重要

東大といえば、以前、秋入学を導入しようとして、結局は4ターム(学期)制に落ち着いたことを覚えているでしょうか。それが女子学生支援と何の関係が?と思われるかもしれませんが、実は問題意識は同じなのです。

東大は日本の大学でトップだと評価されていますが、世界的に見れば、必ずしもそうではありません。英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)のランキングでも、世界で39位、アジアに限っても4位です。

東大が、卓越した研究大学として世界を相手に競争していくには、教育面の充実も図っていく必要があります。秋入学の構想には、秋から新学期が始まる海外からの留学生を受け入れやすくするとともに、日本人学生も海外に留学しやすくすることで、東大生を「タフ」にしよう……という濱田純一・前総長の考えがありました。
2015(平成27)年4月に跡を継いだ五神(ごのかみ)真・現総長も、任期中に目指す姿を示した「東京大学ビジョン2020」の中で、「卓抜性」と「多様性」を二つの基本理念に掲げ、留学生の積極的な受け入れも含めた「学生の多様性拡大」を掲げています。学生が多様でないと、多様な発想も生まれず、世界に通用する教育効果も十分に上げることはできません。

重要なのは、学生の多様性は、留学生に限らないことです。昨年、文部科学省から認可された第3期中期目標・中期計画(2016~21<平成28~33>年度の6年間)の中では、「経済的に困窮する学生や留学生への支援に加え、地方出身の学生、女子学生、優秀な人材の入学及び意欲や能力のある学生の留学を促進するため、各種の奨学・奨励制度を堅持する」としています。女子学生への支援は、そうした多様性確保のための一環なのです。

現状は19%、全国立大より低く

2016(平成28)年5月現在で、東大の学部生に占める女子学生の割合は、19.0%。国立大学全体の36.2%に比べると、低率にとどまっているのが現状です。公平な入学者選抜の結果だと言えばそれまでですが、大学側から見れば、女子学生が少ないままであるということは、足元の多様性が確保できないということになります。2016(平成28)年度から始まった推薦入試では、各高校から男女1人ずつを推薦できるようにしましたが、それも「地方出身の学生」とともに、女子学生を少しでも増やそうとする方策といえます。

住まい支援の対象は、4月に入学する女子学生で、自宅から駒場キャンパスまでの通学時間が90分以上の100人。キャンパス近隣にセキュリティーや耐震性が高く、保護者も宿泊可能なマンション等を用意し、2年間にわたって月額3万円を支援します。

学生集団を多様化して、教育・研究をレベルアップしたいという思いは、東大のみならず、他の国立大学も共有する思いです。東大の例を参考に、他大学にも女子学生への支援が広がっていくかもしれません。

※東京大学 第3期中期目標・中期計画
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/04/07/1368752_02.pdf

※女子学生向けの住まい支援(東大ホームページ)
http://www.u-tokyo.ac.jp/stu02/h04_11_j.html

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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