今年は「道徳科」先行実施も いじめ防止に期待

東京電力福島第1原子力発電所事故により、福島県から他の都道府県へ自主避難した子どもたちが、横浜市や新潟市などの学校でいじめに遭っていることが明らかになり、社会全体に衝撃を与えました。それを受けて、今年の大きなポイントの一つになりそうなのが、新年度からの「特別の教科 道徳」(道徳科)の先行実施です。いじめ防止対策として、「考え、議論する道徳」を目指す道徳の役割が期待されているからです。

自分事として考えさせる授業に

小中学校の「道徳の時間」は、これまで特別活動などと同じ「領域」に位置付けられていたのですが、2015(平成27)年3月の学習指導要領一部改正により、教科書を使用するものの数値による評定はしないという「特別の教科」となりました。道徳の教科化の背景には、大津市の中学生いじめ自殺事件など学校におけるいじめの深刻化があります。

道徳科をめぐっては、2017(平成29)年度、小学校教科書の検定結果の発表と、それに続く教科書採択があり、18(同30)年度から全面実施となります。中学校は、2019(平成31)年度から全面実施の予定です。

現在でも、文部科学省作成の資料などを活用して先行実施することは可能ですが、多くの小中学校は、教科書の登場まで待つという慎重な姿勢を取っているようです。

文科省は、横浜市などのいじめの事案を受けて、道徳科の全面実施を待たずに先取り実施をするよう要請する、松野博一文科相のメッセージを発表しました。ここで文科省が強く求めているのが「考え、議論する道徳」への転換です。

メッセージでは、これまでの道徳教育について、「読み物の登場人物の気持ちを読み取ることで終わってしまっていた」と指摘し、「『いじめは許されない』ということを児童生徒に言わせたり書かせたりするだけの授業」になりがちだったとしています。それを「考え、議論する道徳」へと転換することで、いじめはいけないとわかっていても止められないのはなぜかなど、いじめを自分のこととして考える授業をすることを期待しています。

次期学習指導要領への試金石的な役割も

同時に文科省は、いじめ問題の資料をホームページで提供する「アーカイブセンター(仮称)」を設けたり、いじめ防止の参考となる実践事例集や映像教材などを作成したりする予定です。

小中学校では、従来のいわゆる「読み物道徳」から「考え、議論する道徳」へと転換することを強く求められる形となりました。このため2018~19(平成30~31)年度の道徳科の全面実施を待たずに、17(同29)年度から先行実施を検討する小中学校が出てくることが予想されます。

もともと道徳の教科化については、学校関係者の一部に根強い反発があるといわれています。しかし従来の道徳の授業の多くが形骸化していたことも事実でしょう。
いじめ防止のため、そして次期学習指導要領の柱の一つであるアクティブ・ラーニング(自主的・対話的で深い学び、AL)を推進するためにも、道徳科の役割が重要になってくることは間違いありません。「考え、議論する道徳」への転換ができるかどうかが、これから小中学校に問われることになりそうです。

※いじめに正面から向き合う「考え、議論する道徳」への転換に向けて(文部科学大臣メッセージ)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/11/1379623.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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