「考えること」を通して「意欲」が高まる 国際的学力テストPISA2015の結果より

11月下旬から12月上旬にかけて、子どもの国際的な学力テストである「TIMSS2015」と「PISA2015」の結果が公表されました。その結果について、ベネッセ教育総合研究所 副所長の小泉和義が解説します。

国語の読解力・思考力、表現力の低下

小、中学生の算数・数学と理科の知識技能を中心に測定するテスト「TIMSS2015」の結果は、4年前と比べて全体的に上昇しました。その一方、15歳(高校1年生)の国語・数学・科学の読解力・思考力・表現力を測定するテスト「PISA2015」は、3年前と比べ数学と科学の結果は横ばいでしたが、国語は2000年頃の水準以下に下がりました。

ベネッセ教育総合研究所の調査によると、ここ数年、学校は子どもに出す宿題の量を増やしており、子どもの勉強時間も増えました(図1)。また、最近の授業では「話し合い活動」「グループによる活動」なども多く、子どもたちが主体的に考え、課題を解決できるようにさまざまな工夫を行っています(図2)。
今回の国際的な学力テストで知識や技能の力が向上している点は、学校現場でのそうした様々な工夫の成果といってよいでしょう。しかし、話し合い活動やグループ活動を増やしても、少し難度の高い「多様な読解力や思考力」の向上に結び付いていなかった点は今後の課題として残りました。

出典:図1,2 ベネッセ教育総合研究所「第5回学習基本調査」(2015)

学習意欲が国際平均より低い

「TIMSS2015」の結果では、小学生の「理科は楽しい」を除き、小、中学生の算数、数学、理科が楽しいと思う子どもの割合は、国際平均と比べると低く、同様に「PISA2015」の結果をみても、科学が好きと思う高校生の割合は、国際平均でみると低かったことが特徴です。

ベネッセ教育総合研究所の調査では、小学生から中学生にかけて勉強に対する悩みがぐんと増えます(図3)。日常的で具体的な内容から、抽象的な学習内容に変わっていくため、わからないことが増えてしまうことも大きな要因でしょう。しかし、日本の子どもたちの成績は国際的にみればとても高いのです。それなのになぜ意欲が低いのでしょうか。

「学び」とは本来主体的なものです。ですが今の子どもたちの「学び」は、学校から与えられた宿題をこなすだけの受け身の「学び」になっているのかもしれません。また、学校の授業でたくさん行われている「話し合い」や「グループ活動」の中で、子どもどうしの会話量は増えたとしても、自ら考えたり調べたりする時間は不足しているのかもしれません。この「自ら考える」時間を授業や家庭学習の中でどうつくっていくのかが課題なのです。

 図3
 【子ども】Q :あなた自身のことについて、次のようなことはどれくらいあてはまりますか。
        「勉強しようという気持ちがわかない」

出典:東大・ベネッセ「子どもの生活と学びに関する親子調査2015」

家庭では何ができるの?

今回の国際的な学力テストの結果から見えた課題は、文章の読解を通して「考える力」を高めることと、学習意欲を高めることです。この2つは、別々の課題ではありますが、お互いに関連し合っています。

家庭の中で、子どもの考える力を育てることはできると思います。例えば、日常生活の中で子どもに「なぜだろう?」「どうすればよいかな?」といった問いかけをしてみてはどうでしょうか。また、家で読書をする際に、物語文だけでなく、新聞や雑誌で内容のやさしいコラムを一緒に読んだ後、コラムの内容について「この内容には賛成?反対?」「どうしてそう思うの?」と問いかけたり、おうちのかた自身の感想を伝えたりするのもよいでしょう。そうしたやりとりをする中で、子ども自身の考える力の芽が育っていくと思います。「考えること」が面倒でなくなると、授業で先生の話や友達の意見を「なんでだろう」「どうすればいいんだろう」などと主体的に考えながら聞くことができるようになり、結果として考える力や学習意欲を高めることにつながるのではないかと考えます。
現在の中学2年生以下の子どもの大学入試制度は変わります。変化のポイントを簡潔にいうと、「知識や技能」中心の入試から「考える力」を問う入試への変更です。「考える力」を育てていくことは、大学入試でも必要なのです。ぜひ日常生活の中で「考える」習慣をつけられるとよいと思います。

プロフィール


小泉和義

ベネッセ教育総合研究所 主任研究員。全国の小学校、中学校、高等学校などの現場を取材し、子どもたちの実態や学校での指導課題を踏まえ、「今」と「これから」の教育に必要なことは何かを発信し続けている。

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