家庭教育の「責任」、どう考える? 政府会議が議論

政府の教育再生実行会議は、10月以降の新たなテーマとして、(1)学校・家庭・地域の役割分担と教育力の充実(2)子どもたちの自己肯定感が低い現状を改善するための環境づくり……の二つを設定し、議論を始めています。いずれも家庭教育に、大きく関わるものです。どう考えればよいのでしょうか。

学校の教育力向上のため!?

1つ目のテーマについて、教育再生担当相でもある松野博一文部科学相は「家庭や地域の教育力の低下が指摘されるなか、今日の教育現場は、教師の長時間労働によって支えられている面があり、そうした状況は変えていく必要があります」と説明。教育現場の教育力が低下することのないよう、学校・家庭・地域が担うべき役割を明確にするとともに、家庭・地域の教育力の向上について検討してほしい……としています。

どうやら、家庭教育などの問題を正面から取り上げるというより、多忙化する学校の問題の解決が念頭にあるようです。前任の馳浩文科相は1月、中央教育審議会からの3答申(2015<平成27>年12月)をもとに「『次世代の学校・地域』創生プラン」(通称・馳プラン)を策定し、「チーム学校」や地域との連携・協働で、学校の教育力を向上させる方針を打ち出しました。今回の実行会議での検討も、その延長線上にあるといえそうです。

年内の答申を目指して改訂論議が進められている次期学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」の実現を目指しています。そこには、家庭や地域の理解と協力があってこそ、次代に必要な資質・能力を子どもたちに育むことができる……との考えも含まれています。「馳プラン」も、そうした教育課程を実現させるためのものという位置付けです。

もちろん、実行会議に示された参考資料のように、本来は家庭で行うべき礼儀やマナーなど子どものしつけを、教員に期待する保護者が一定程度いることは、否定できません。

具体的な支援策も不可欠

確かに、第1次安倍晋三内閣の下で改正された教育基本法(2006<平成18>年12月)では、「保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」として、生活習慣や自立心を身に付けさせ、心身の調和の取れた発達を図ることを、努力義務としています。当時の「教育再生会議」も、家庭が教育の原点であること、保護者が率先して子どもにしつけをすることなどを提言しました。

しかし、法律に家庭の責任を定めたからといって、家庭の教育力が充実するわけはありません。むしろ第1次内閣のころと比べても、家庭を取り巻く状況は、さらに厳しくなっていると言うべきでしょう。とりわけ経済的格差の広がりで、子どもに十分な目を向けられない家庭の増大が指摘されています。家庭教育の充実には、家庭自体の支援という視点も不可欠でしょう。子どもの自己肯定感を育むにも、まずは家庭の中で存在が認められ、心身ともに安定した生活を過ごすことが大前提です。

文科省も強調しているように、日本の学校は、学力だけでなく、心や体の育成も担っているところが、諸外国との違いであり、よさでもあります。責任の押し付け合いではなく、お互いの相乗効果によって、将来の社会で活躍できる子どもを育みたいものです。そのための具体的な手だてを、実行会議には提言してほしいものです。

※教育再生実行会議 第38回(10月28日)配布資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/dai38/siryou.html

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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