18歳は大人?子ども? 早ければ2020年から「18歳成人」

法務省は、民法上の「成年年齢」を、現行の20歳以上から18歳以上に変更する方針を明らかにしました。既に一般からのパブリックコメントの募集を終えており、早ければ2017(平成29)年春の通常国会に、民法改正案を提出する方針です。実施には3年程度の周知期間を取ることとされており、最短の場合、東京五輪・パラリンピックの開催される2020(平成32)年に、18歳成人が実現することが見込まれます。18歳成人になると、若者たちの生活は、どう変わるでしょうか。

契約も保護者の同意なしに

改正公職選挙法の施行により、2016(平成28)年夏から選挙権年齢が18歳以上に改められたことに対応して、民法の「成年年齢」をどうするかが課題となっていました。これに対して法務省は、「特段の弊害がない限り、選挙年齢と民法の成年年齢とは一致していることが望ましい」という立場から、成人年齢の引き下げを決めたものです。

パブリックコメントでは、最初の年だけ既存の18~19歳を一斉に成人にすることの是非などについて意見を聞いていますが、これは、とりもなおさず「18歳成人」を実施するということを意味しています。

18歳成人では、周知期間を3年間程度確保するとしています。仮に2017(平成29)年春の通常国会で民法改正案が成立した場合、早ければ20(同32)年の施行日(1月1日または4月1日)に、その時の18~19歳の若者たちが、一斉に成人と位置付けられます。施行日後は、18歳の誕生日から成人となります。

民法上の成人になると、クレジットカードの作成、スマートフォンの契約、金融機関などとのローン契約、商品の売買契約などが、保護者の同意なしでできるようになるほか、労働契約を自分で結ぶこともできます。つまり、法的に「大人」として扱われることになるということです。

なお、たばこ・酒などに関しては法律が別になっているため、現行のままとするか、18歳に引き下げるか、別途検討される予定です。

依然として根強い反対論・消極論

ただし、現行のままでは、若者たちが詐欺などに遭う可能性が高いことから、法務省は、高校など学校教育での消費者教育・金融経済教育・法教育などの充実が必要であるとしています。

これに対して高校関係者などは、「現行の授業時間数では、消費者教育などに多くの時間を割くことは難しい」として、消極的な意見が多いようです。また成人と未成年が高校に混在することになるため、「成人としての権利を主張されると生徒指導が成り立たなくなる」と不安視する高校関係者も少なくありません。

日本弁護士連合会も、現実的に学校での消費者教育などに期待できないため、保護者が売買契約などを取り消すことができるという「未成年者取消権」が引き下げられれば、悪質な業者の被害に遭う若者が増えることは必至と批判しており、18歳成人については、「引き続き慎重に検討すべきである」という立場です。

一方、法務省は18~19歳の若者を「大人」として扱うことで、若者たちの自覚を高め、社会全体の活力をもたらすことになると説明しています。

いずれにしろ、18歳は大人か子どもかをめぐり、十分な議論が必要であることは間違いないようです。

  • ※民法の成年年齢の引下げの施行方法に関する意見募集(法務省)
  • http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080150

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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