大学入試改革と新テストの行方は? カギ握る体制の整備・充実

大学入試改革について文部科学省は、具体的方法の検討に入っています。
しかし、大学入試センター試験に替わる新テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」に記述式問題をどのように導入するかなど、依然として課題は山積したままです。そのようななかで、国立大学協会(国大協)が提案した記述式問題の実施方法が、関係者らの注目を集めています。

課題山積の新テスト・記述式問題

文科省は、大学教育と高校教育、それをつなぐ大学入試の3つを「三位一体」で改革することを狙っています。しかし、多くの保護者や受験生にとって最も関心があるのは、大学入試改革、特に新テストの行方でしょう。

新テストでは、知識だけでなく、思考力・判断力・表現力などを多面的・総合的に評価するため、「記述式問題」を導入する方針が決まっています。しかし、採点に多くの時間を要する記述式問題をどう実施するかは、いまだに決まっていません。50万人以上が受験する新テストで記述式問題を実施した場合、採点の期間をどう確保するか、誰が採点をするのかなどが課題となるからです。そこで国大協は、新テストの記述式問題について、三つの方式を検討した「論点整理」をまとめました。

一つ目は、現行センター試験より前倒しで新テストを実施する方法です。たとえば前年の12月中旬に前倒しすれば、採点期間は40日程度確保できます。しかし、高校教育に大きな影響を及ぼすため、高校関係者の理解を得るのは「相当な困難が予想される」としています。

二つ目は、現行センター試験と同日程で実施する方法です。ただ、採点期間は2週間しかないため、記述式問題の解答はごく短文にならざるを得ず、無理して出題することに「疑義が呈される」としています。そのため、記述式問題だけ切り離して採点し、結果は国立大学入試の前期日程(2月下旬)までに各大学に通知する方法も「選択肢として考える必要があろう」としています。

各大学での採点を提言

そして三つ目の方法が、現行センター試験と同じ日程で実施し、記述式問題の採点は各大学に任せる……というものです。これだと、国立大学の前期入試まで採点期間が確保できるうえに、記述式の解答を誰が採点するのかという問題も解決できます。しかし、各大学の負担が重くなることに加えて、大学ごとに具体的な採点内容などの対応が分かれるという問題が指摘されています。また、個別試験で記述式問題を出題している大学では、新テストの記述式問題を採用しない可能性もあります。

いずれにせよ、国大協が具体的提案を行ったことで、新テストは具体化に向けて一歩前進することは間違いないでしょう。また国大協が実施したアンケート調査によると、大学院大学を除く82大学のうち63大学が、個別入試を前期・後期の2回実施する分離分割方式の維持などを求めています。

一方、新テストの記述式問題を採点する「余力はない」と答えた大学もあるなど、国立大学も決して一枚岩でないことをうかがわせており、各大学の入試体制の整備・充実などがもう一つの大きな課題となりそうです。

※大学入学希望者学力評価テストの実施時期等に関する論点整理
http://www.janu.jp/news/teigen/20160819-wnew-newtest.html

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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