いじめ、小学校で本当に改善したの?

国立教育政策研究所が発表した「いじめ追跡調査2013—2015」の結果から、小学4年生から6年生までの間、「仲間はずれ、無視、陰口」など、暴力を伴わないいじめを3年間で一度もしたことがないという子どもの割合が、初めて増加したことがわかりました。暴力を伴わないいじめでは、これまで、加害児童と被害児童の割合がほぼ同じだったことから、いじめの加害者にならない小学生が増えてきたといえます。しかし、実際にはそう簡単な問題でもないようです。

加害経験者が初めて減少

調査は、大都市近郊の地方都市にある公立小中学校19校の小4~中3の全児童生徒を対象に、2013~15(平成25〜27)年にかけて実施しました。同研究所は、同じ小中学校の子どもたちを対象にした追跡調査を1998(平成10)年度から実施しており、今回は5回目となります。

過去の追跡調査により、いじめについてさまざまな実態が判明しましたが、最大のポイントは、子どもの多くが、いじめの被害者であると同時に、加害者でもあることが明らかになったことです。つまり、現在のいじめの特徴は、誰にでもいじめは起こり得ること、そして、いじめの加害者と被害者の立場が、簡単に入れ替わることです。

今回の結果を見ると、2013(平成25)年度の小4が15(同27)年度に小6になる3年間で、暴力を伴わない「仲間はずれ、無視、陰口」などのいじめを受けたことがない子どもは11.5%、いじめをしたことがない子どもは21.4%でした。過去の調査も加えて比較すると、小4~6の3年間を通じていじめの加害経験がない子どもは、4年前が14.4%、3年前が17.7%、2年前が21.3%、そして今回が21.4%となり、初めて増加傾向を示しました。

これまでの追跡調査では、いじめの被害経験のない者と、加害経験のない者の割合は、ほぼ同じでしたが、今回初めて、両者の間に約10ポイントの差が開いたことになります。同研究所は「2013(平成25)年にいじめ防止対策推進法が制定されたことを受けて、加害行為をやめさせようとする教員が増えたためではないか」と説明しています。

「観衆」「傍観者」にならない指導を

しかし、いじめの加害者となる子どもの割合が小学校で減少したからといって、喜んでばかりもいられません。いじめの被害経験のない子どもの割合も減少しているため、加害者となる子どもが減っても、「直ちに被害者の数が減るとは限らない」(同研究所)というのが実情です。

一方、中学校を見ると、中1~3の3年間で一度もいじめの被害がなかった生徒は31.5%、いじめの加害経験のなかった生徒は34.2%で、過去の調査と同じ傾向を示しています。小学校ほどではありませんが、中学校でも約7割の生徒が、被害者と加害者の立場を入れ替わりながら、いじめを経験しているようです。

また、現在のいじめは、「加害者」と「被害者」だけの関係で語ることはできません。いじめをけしかけたり笑ったりする「観衆」、いじめを見て見ないふりをする「傍観者」の4者による4層構造が、現在のいじめのもう一つの特徴だからです。

いじめの加害者にならない子どもが小学校で増えたことは喜ばしいことですが、さらに「観衆」や「傍観者」にもならない子どもたちを増やしていくことが重要でしょう。

※「いじめ追跡調査2013-2015」
http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/2806sien/tsuiseki2013-2015_3.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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