臭い・汚い、改修予算もない……学校トイレをめぐる課題は

最近のトイレ環境の改善には、目を見張るものがあります。駅や公園の公衆トイレも、きれいに整備されつつあります。その中で取り残されているのが、公立学校のトイレではないでしょうか。トイレ関連企業でつくる「学校のトイレ研究会」の調査で、問題を抱えながら予算不足で改修できない、学校トイレの実態が明らかになりました。

耐震化後、課題のトップに

調査は、2015(平成27)年度、1,741市区町村と公立小中学校2,000校を対象に実施し、うち192市区町村(11%)、273校(14%)から回答を得ました。

子どもたちのために改善が必要と思われる施設・整備を尋ねたところ、小中学校では1位が「トイレ」で59%、続いて「パソコン・電子黒板」が30%、「省エネ型空調機への更新」が27%などの順となっています。市区町村では、1位はやはり「トイレ」で73%、続いて「外壁」が47%、「教室」が33%、「高効率照明器具」が26%などとなっています。小中学校の約6割、市区町村の7割以上が、学校トイレの改善が必要と考えていることになります。

6年前の2009(平成21)年度調査を見ると、小中学校の課題のトップは「トイレ」で51%、2位が「校舎の耐震化」で38%、市区町村では1位が「校舎の耐震化」で71%、2位が「トイレ」で63%でした。文部科学省の指導で校舎の耐震化が急速に進んだ一方、学校トイレは依然として課題として残っていることがわかります。

また、家庭のトイレの洋式化により、最近の子どもたちは、和式便器が苦手といわれています。小中学校の和式便器の割合(「全部和式」と「和式が多い」の合計)は59%でした。洋式化が進んだものの、まだ約6割の小中学校のトイレが和式主体のままとなっています。子どもの場合、和式便器では排泄物が外に飛び散ることが多く、専門家の間では衛生上問題があるとされているようです。

予算不足で優先順位が後回しに

一方、学校トイレについて困っていることを聞いたところ、市区町村では1位が「臭い・汚い」で74%でした。2009(平成21)年度調査でも1位は「臭い・汚い」の77%だったことを考えると、学校トイレの「臭い・汚い」は長年の課題であるようです。

なぜ、学校トイレの問題は放置されているのでしょうか。それは、困っていることの2位を見ると理解できます。2009(平成21)年度調査では「改修予算がない」が58%、15(同27)年度調査でもやはり2位は「改修予算がない」で49%でした。学校トイレを何とかしたくても、予算がないので後回しにせざるを得ない……というのが市区町村の本音のようです。

しかし学校トイレの問題は、和式便器だけにとどまりません。タイルやコンクリートの床などに直接水を流して掃除する湿式清掃は、細菌などが飛び散りやすく、衛生面で問題があるとされています。調査でも市区町村の69%が、乾いた床をモップやほうきで掃除する乾式清掃が望ましいと回答しています。

校舎の耐震化がほぼ完了した現在、次の課題として、老朽化した学校トイレが注目されるべきでしょう。古くてもきれいに掃除して使えばよいという意見もありますが、学校トイレの老朽化はより深刻な問題となっているようです。

※学校のトイレ研究会「学校トイレの挑戦!」No.19(2016年)
http://school-toilet.jp/book/pdf/vol19.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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