今、公立大学に注目 私立から移管の動きも

進学校を中心として高校の進路指導などでは、「国公立大学進学者数」が、よくデータとして用いられています。しかし、国立大学はわかるとして、公立大学については、どれくらいご存じでしょうか。全体の大学数・学生数・学費など、意外と知らない人も多いのではないでしょうか。

国立大学の数を上回る

そもそも、国立大学と公立大学はどちらが多いのでしょうか。実は、公立大学には多様な設置形態があり、どうカウントするかで、違いが出てきます。ここでは、文部科学省ホームページの中の「公立大学」のページをもとにご紹介したいと思います。

それによると、2016(平成28)年4月現在、公立大学は全国で88校が存在します。これに対して、国立大学は全国86校(大学院大学を含む)となっています。つまり、学校数だけを見れば国立大学よりも公立大学のほうが多いのです。

公立大学は、1989(平成元)年度には全国で39校しかありませんでした。ところが、地方活性化のために大学設立や大学誘致を希望する地方自治体が多く現れ、2004(平成16)年度には77校に増えました。その後、統廃合や新設などを重ねて、現在では過去最高の88校となり、大学数全体の1割以上を占めるまでになっています。学生数も1999(平成11)年度は約10万1,000人だったものが、15(同27)年度は過去最高の約14万9,000人となり、大学生数全体の5.2%となっています。

地方創生で広がる「公立化」

公立大学は、国際教養大学(秋田県)など全国から受験生を集めている大学もありますが、多くは地元進学者が中心であるため、全国的に知名度に欠ける大学も少なくないのが実情です。しかし、全国的に無視できない動きが、公立大学で広がっています。私立大学の「公立化」です。

2009(平成21)年度に私立の高知工科大学が高知県の公立大学になったのを皮切りに、静岡文化芸術大学(静岡県)、名桜大学(沖縄県北部広域市町村圏事務組合)、鳥取環境大学(鳥取県・鳥取市)、長岡造形大学(長岡市)が、公立大学に転換しています。2016(平成28)年度は、成美大学が京都府福知山市を設置者とする「福知山公立大学」に、山口東京理科大学が山口県山陽小野田市を設置者とする「山陽小野田市立山口東京理科大学」に、それぞれ移管され、校名を変更しました。

公立大学の授業料は、ほぼ国立大学と同じ、年間53万6,000円程度となっています。私立大学が公立に転換すると、学費が各段に安くなるうえ、公立というブランドもつくため、公立化した大学は、私大当時に比べて、志願者がいずれも増加しています。

この他、長野県などでも私立大学の公立化が検討されており、少子化による志願者確保に悩む私立大学と、地方創生の一環として大学存続を望む地方自治体の利害が一致した私立大学の「公立化」は、今後も増えることが予想されます。今後、受験生の進路選択にも影響を及ぼしそうです。

※公立大学について
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kouritsu/index.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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