18歳選挙で「主権者教育」の実態は?

選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられて初の選挙となる参議院選挙が目前に迫っています。全国の多くの高校では主権者教育に取り組んでいますが、その実態はどうなっているのでしょうか。文部科学省の調査で、ほとんどの高校で主権者教育を実施しているものの、選挙の仕組みなどが中心で、現実の政治問題などを話し合うなどの活動は少ないことがわかりました。

政治的問題などの話し合いは約3割

調査は2016(平成28)年4~5月にかけて、全国の国公私立高校などの全日制・定時制・通信制の延べ6,407校を対象に実施しました。まず、2015(平成27)年度の主権者教育の状況(回答延べ6,322校)を見ると、高校3年生以上に対して主権者教育を行った高校は94.4%でした。主権者教育を実施した教科等(複数回答)は、「特別活動」が61.6%、「公民科」が54.6%、「総合的な学習の時間」が11.5%などです。

主権者教育の内容(複数回答)を見ると、「公職選挙法や選挙の具体的な仕組み」が89.4%なのに対して、「現実の政治的事象についての話し合い活動」は20.9%、「模擬選挙等の実践的な学習活動」は29.0%にすぎませんでした。改正公職選挙法は2015(平成27)年6月に成立したため、十分に対応できなかった高校もあったようです。

ところが、2016(平成28)年度の高校3年生以上に対する主権者教育の実施予定(回答延べ6,295校)を見ると、全体で96.4%の高校が主権者教育を予定しているものの、その中身(複数回答)は、「公職選挙法や選挙の具体的な仕組み」が82.4%、「現実の政治的事象についての話し合い活動」が30.3%、「模擬選挙等の実践的な学習活動」が39.7%、「検討中」が11.9%などで、模擬選挙など体験的授業が約4割、政治的問題の話し合いが約3割にとどまっています。この辺が高校における主権者教育の今後の課題といえそうです。

特別活動や公民科などが主な舞台に

この他、2016(平成28)年度に3年生以上の生徒に対する主権者教育を実施する教科等(複数回答)は、「特別活動」が62.0%、「公民科」が59.5%、「総合的な学習の時間」が19.2%などで、前年度と比べて公民科や総合的な学習の時間での実施が増えており、年間の指導計画の中に組み込まれていることがうかがえます。主権者教育の指導時間は、年間で「2~4時間」が55.7%、「1時間」が19.7%、「5時間以上」が10.2%などで、2~4時間が半数以上を占めています。

ただ主権者教育は学校だけが、その場ではありません。文科省は、主権者教育について「社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一人として主体的に担うことができる力を身に付けさせること」が重要だとしています。家庭でテレビのニュースを見ながら政治に関する話題を話し合ったりすることも、立派な主権者教育の一つだといえるでしょう。

  • ※主権者教育(政治的教養の教育)実施状況調査について
  • http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/06/14/1372377_02_1.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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