どうする?「学校に行きたくない」と言う子ども [やる気を引き出すコーチング]

私のコーチ仲間Aさんのお宅のお話です。ある時、小学5年生の娘さんが、急に「学校に行きたくない」と言い出しました。娘さんの友達の話によると、どうやら、学校で嫌がらせをされているようです。本人に穏やかにたずねてみたところ、自分に冷たくする子がいるので会いたくないとのことでした。学校であったことなど、自分からはあまり語ろうとしません。それでも、家にいる時は、わりと元気そうなので、安心していると、朝になって、「学校に行きたくない」と言い出すのです。
さて、こんな時、お子さんとどう接しますか?

子どもをそのまま受けとめて待つ

「どうして行かないの?」「いいから! 早く行きなさい!」「そんなことぐらいで負けていたらダメでしょう!」「いちいち気にしないで! もっと気楽に考えようよ」「お母さんから先生に話してあげようか?」などなど、つい叱咤(しった)激励や提案をしてしまいそうですが、Aさんは、さすがにプロのコーチです。こんなふうに話してくれました。

「子どもも子どもなりにたいへんなんだなー」と思います。大人だって、仕事に行きたくない日もありますよね。会いたくない人だっていますよね。「学校に行きたくない」と言う娘を見ていると、つい怒りたくもなりますけど、「子どももいろいろあるんだなー」と思って、その気持ちは否定しないで受けとめるようにしました。「そうか、行きたくないんだね」「イヤなんだね」って。

どうしようもなくて、何度か休ませたこともありました。学校に行かないことは責めないで、たくさん愛情のガソリンを注いであげようと思って、娘が大切な存在であることを伝えていました。怒りたくなっても、怒らずに客観的に見られるのは、コーチングのトレーニングのおかげだなと思います。

無理強いしないで、いつか話してくれる気持ちになるのを待ちました。あせらず、娘がその気になるのを待つ。「その気になる」って、「その期になる」ってことですよね。娘が自分で考え、解決する時期が必ず来る! それを信じて、今は待ってみようと思いました。子育てはまさに自分育て。忍耐の部分もありますよね。

子どもが自分で解決する力を奪わない

Aさんのお話は続きます。
たとえば、いじめの問題など、親が介入して解決したとしても、本当にこの子が解決したことにはならないと思います。自分で解決する前に、いつも親が助けていたら、親がいないと生きていけない子どもになってしまいます。子どもが自分の課題を自分で解決する機会を親が奪ってはいけないと思います。

その代わり、「私はいつもあなたの味方だよ」「話したいことがあったらいつでも聴くよ」と伝え続け、その姿勢を示していました。家や家族は、絶対に自分を信じて守ってくれる場所であると娘が感じられるようにしました。

Aさんのお話を聴いて、かつて、2人のお子さんが不登校だったというかたの言葉を思い出しました。
「『待つ』とは『何もしないこと』ではないんです。あなたが学校に行っても行かなくても、今までと変わらず、私はあなたを大切に思っているということを子どもに伝えることが大事なんです」。

さて、その後、Aさんの娘さんは、保健室登校を経て、6年生になり、今では元気に、皆と一緒に教室で勉強しています。行きたい中学校を見つけたようで、自分で「行きたい!」と思ったら、自発的に勉強にも取り組むようになりました。「学校に行きたくない」と言っていた時期は、Aさん自身もイライラしたり、やきもきしたりで、つらかったようですが、ふりかえってみると、ほんの一時のことでした。

どんな状況にあっても、自分のことを責めず否定せず、信じて愛してくれる存在があれば、子どもは自分の課題を自分で乗り越えられるし、その体験を通じて、解決力も育まれていくのではないかと思います。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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